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③玉座の間

――――――――――


 相田は、王の間に立たされていた。

 周囲を見渡しても、一面の白。壁もなく、天井もない。しかし、床と正面の玉座だけは存在していた。

 やや視線を上げると、そこには銀髪の、あの男がいた。

「大魔王―――」

 相田がその名を呼ぶ。

「お前が、俺を呼んだのか」

 玉座に座る男がほくそ笑む。

「そうしなければ、お前は負けていた………こういう時、人間は『感謝の言葉』というものを吐くのだろう?」

 

 男の言葉に、相田は直前の記憶が徐々に鮮明になっていく。

 バージル卿に雷の一撃を与えようとしたその時、相田の足元に落ちていた騎兵槍(ランス)に、小さな炎が当てられた。

 その瞬間、騎兵槍(ランス)の表層に受け出た魔力結晶が赤黒く発光する。


 そして,大爆発。


「心配するな。爆発面には盾を挟んでおいた。それに—――」「ここと向こうとでは、時間の流れ方が違う………だったか?」

 相田は、取り敢えず受け入れる事にした。

「遅くなったが、助かった。礼を言う」

「………言い方は無骨だが………成程、言われるのも悪くない」

 男が、大魔王と呼ばれる存在が立ち上がる。

「それで? 勝てそうかな? 若き魔王殿は」

 軽口を吐きながら、相田に近付いていく。


「………正直、手強いな」

 相田は心の内を明かす。

 一方的な受け身ではない。だが、決め手に欠ける。敵には絶対の経験があり、相田にはそれがない。

「いまいち、押し切れない」

「客観的視点は、及第点だ」

「どうも」

 相田の隣で男が止まる。身長に頭半分の差があるが、互いに目を合わせようともしない。

 だが、同じものは見ていた。


「お前なら、勝てると?」

「愚問。余を誰と心得る」

 もう一度名を名乗らせようかと、男が肩を震わせる。

 数多くある物語において、相田が想う最も魔王に近い存在。外見、矜持、強さ、あらゆる点において何度もそうあれたいと自分を重ねてきた。

 だが、本当に呼び覚ましても良いものかとの疑念は払拭できずにいる。


「心配するな。仮に余を呼び出しても、貴様の力が衰える事もなければ、成すべき事も変わらない。世は並べて事もなし、いつも通り、貴様は悩み続ければよい」

「そうかい………なら、それを信じるとするかね」

 相田は、男の案を受け入れた。

「俺を信じて戦ってくれる奴らがいる。家族が待っているんだ………まだ死ぬ訳にはいかない」

「そうだ。それでこそ、人間だ」

 大魔王と呼ばれた男と相田は、互いにすれ違うように歩き始める。

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