⑤中央の戦い
相田の背後では、カデリア王国軍や住民達の決死の叫びと無言の躯達が、金属の音も響かせていた。
フォーネ達と共に、相田は崩れさった門の残骸を通り過ぎる。
既に召喚した不死者達は、門を突破するまでに使い切った。相田は無言のまま魔剣を石畳に突き刺すと、先程まで敵だった兵士達を一斉に起き上がらせる。
「もう、まともな死に方は出来ないな」
思わず鼻で笑う。
今更であった。
だが、それでも相田は前に進むしかなかった。何を選んでも、どこもかしこが血で塗れた道である事を理解している。そして、未だ自らの行為に慣れず、自身の感情と役割との葛藤に悩み続けている。
呼び出した死者を操り、戦列を組み終えた頃には、カデリア王国軍もまた広場の半包囲を終えていた。北の王城に繋がる大通りは勿論、東西へ繋がる大通りも騎馬隊と長槍を持った兵士達に封鎖されている。
「例え何が来ようとも、穴を穿つ」
相田は剣を掲げ、前面へと突き向けた。無言の号令により、敵と同じ武装を施された百人近い死人達が一斉に走り出し、中央の噴水を左右に迂回しながら、正面の集団へと斬り込んでいく。
恐怖を知らない亡者達は、持っている武器を無造作に振り上げ、長槍を構える兵士達に肉薄する。多くは正面の槍に貫かれて朽ちていくが、槍衾の隙間を縫って入り込めた亡者の武器が生者の鎧の隙間を斬り、貫き、そこから綻びが生まれ、恐怖と共に次第に傷口が広がっていく。
相田達もそれに続こうと、噴水前を走り出す。
「お父さん! 左右の敵がっ」
一階と二階の間の高さを飛んでいたケリケラから、東西を塞いでいた騎馬と長槍の兵士達が一斉に動き出した事を伝えてくる。
それと同じくして、彼女よりもさらに上空を飛んでいた有翼人と小鬼の伝令から発光信号が全軍に向けて何度も送られた。
「西門が開いたのかっ!」
相田が発光信号の意味に気付く。
魔王軍の方針の変更を知らされた王国騎士団が、西の大正門を自力で突破した。これにより、南と西の区画制圧は時間の問題となり、魔王軍と王国騎士団が最短で合流するためにも、そして王城へと攻め込む為にも、相田達がいるこの広場の確保がより急務となった。




