⑤第十騎士団
「跡形も残さず………か。気に入った」
陰気な笑いを残し、細身の男が影の中に消えていく。
「姿と話を見聞きするに、力任せではない。つまり、彼には魔法の才があるということかな?」
今まで口を開けていなかった最後の男が答える。
その男は緑のローブに同じ色で統一されたとんがり帽子、そしてカールのちょび髭と、相田は瞬時にして、酒場で仲間になりそうなRPGの魔法使いを当てはめた。
デニスが真面目な表情で頷く。
「俺もそう思う。だが、その力も自分では自由に操れないようだ。こいつには近接主体の訓練と並行して魔法に関する訓練も行わせる。そっちは任せたぞ、テヌール」
彼の言葉に了解したと短く答えると、テヌールは軽く帽子をもち上げて相田に挨拶する。
「今更だが、紹介しよう」
小さく咳き込んだデニスは、仲間に向かって一人ずつ指を向けた。
「まず戦士のザイアスとシリアだ。見た目通りだが、ザイアスは力、シリアは速さに優れている」
「ま、足だけは引っ張らないでおくれよ、坊や」「がはははは」
相田も改めて小さく会釈する。
「さっき、消えたのがサージン。暗殺など、暗器や毒の扱いに長けている。そして、そこの魔法使いがテヌールだ。この中では一番まともだ」
「よろしく、相田君」
テヌールは帽子をもう一度小さく持ち上げた。
「で、最後に弓使いのポーンだ………あー、あそこだ」
デニスが窓の外を指さす。そこでは矢を車のワイパーのように振っている腕が見えた。顔は見えないが、恐らくその下で座っているのだろう。相田は一応と頭を下げる。
「そして、俺が団長のデニスだ。皆、癖は強いが全員申し分なく強い。これからお前は第十騎士団の一員として、我々と行動を共にしてもらう」
「お、お手柔らかにお願いします。デニス団長」
瞬間。二本のナイフが相田の左右の頬の横を通り過ぎて壁に刺さった。
「………な、何か、したでしょうか?」
相田の体が硬直する。
「違うよ坊や」
シリアが意地悪く笑っている。
「うちでは、団長じゃなく隊長って呼ぶんだ。気をつけな。がははははは」
ザイアスが口を大きく開けて笑い出す。
「は、はい。隊長です………ね」
そう答えるしかなかった。




