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②握手に込められたそれぞれの想い

「これからよろしく頼むよ。相田君」

 ロデリウスが手を差し伸べる。

「あんたらの王様に、一言伝えて欲しい事がある」

 握手を求める手を無視し、相田はロデリウスの胸元に指を突き立てた。

「………あの村の人達に何かあったら絶対に許さねぇ。あんたらの信じる神なり、ご先祖さんの所なり、好きな場所に家族総出で超特急で送ってやる。だが、村の人達が安全な限りは力を貸してやる。いいか………絶対に破るなよ?」

 覚悟を決めて不敵に笑う相田に、ロデリウスは一瞬息を呑む。だが、『伝えておこう』と再び笑みを零す。

 そこでようやく相田はロデリウスの手を取った。ぐりぐりと骨をずらすような中学生風の握手をすると、ロデリウスは意外と脆かった。


「あ痛たたたたっ。あぁ、そうそう、紹介が遅れた。隣にいる人はデニス・ウィック。これから君が所属する第十騎士団の団長だ」

 涙を浮かべるロデリウスの紹介に、相田は改めて男の姿を見上げる。

 年はこの国の王と変わらない四十代前半、茶色交じりの髪は短く、無精髭が目立つ。鎧こそ着ていないが、服を盛り上げる筋肉質な体格の良さから、只者ではない雰囲気を漂わせていた。

「デニスだ。君の話は聞いている。頼むから私の仲間を殺すような事はしないでくれよ?」

 丁寧だが聞き取りやすい低く、力強い声に相田に向かって握手を求める。

「あんたらの王様との約束が守られている間は、出来るだけ気を付けますよ」

 それまではよろしく、と相田はデニスの大きく硬い手を握り返す。


「話は歩きながらしよう、ここは寒いからね」

 体をさすり始めたロデリウスは先頭を切って歩き始めた。



「ロデリウス・・・・・・さん」

 仕方なく、さん付けで相田は切り出す。

「デリー、でいいよ。親しい人はそう呼ばれている」

「わかりました。じゃぁ—――」

 ロデリウス、と相田は答えた。


「すぐにバレるだろうから、今の内に言っておくが、俺には戦いの経験も政治や経済の知識も殆どない。あの時だって、どうやって力を出せたんだか未だに分からない」

 螺旋状の石階段を上りながら、最後尾の相田は素直に答える。

 その答えに、ロデリウスは至って冷静に返す。

「君はこの世界の事を知らなさ過ぎる。君の異世界の知識も重要だが、まずはこの世界の事を学んで欲しい。特に魔法の使い方を学べば、『あの力』の出し方も分かるかもしれないしね」

 魔法の知識を学べば見えてくるものがある、ロデリウスの言葉には一理あった。

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