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Lost12 優しき青年は、冷酷な魔の王になれるのか  作者: JHST
第八章 最後の一週間、人として
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④誰の予想通りか

 骨格の一体が細い指を相田に向ける。

「しかし、相田よ。我らの正体に気付いていながら、復活させるとは………愚かなのか? それとも自分ならば我らを御し得るとでも思ったか?」

「短い間ではあったが、実に面白い男だった。我ら兄弟を復活させた礼として、是非とも褒美を受け取ってもらいたい」

「お、マジか? 貰えるなら貰っておくぞ」

 双子竜は互いに相田に一歩向かうと、相田から太陽を奪う。

「さぁ、何をくれるんだ?」

 相田は、左右の大剣が一本ずつ上がっていくのを見上げ続けた。

 そして振り下ろされる、大剣。

 だが相田は微動だにせず、双子竜の一撃を一枚の黒い盾で防ぐ。

「死を与えるってか? 随分とまぁ、分かり切ったセコい事を………だからお前等は揃って下手なんだって」

 魔剣に封じられた怨念が素直に感謝するはずがないと、短い付き合いの中であっても相田は分かっていた。そして本当に邪悪な双子竜ならば、感謝どころか相田の言う事を簡単に聞くはずがない。

 それだけ相田にとって、双子竜の行動は予想の中心を行く展開であった。


「予想通りか。まぁそうでなくてはな」

「だが、我ら兄弟は貴様の技で生まれた訳ではない。貴様のもつ想像(創造)の力とやらが絶たれようとも、我らはこの世にあり続ける事が出来るのだ。がははははは!」

 相変わらず双子竜が一言目、二言目の後に下品に笑う。

「まぁ、そうみたいだな」

 自力で実体化した時点で、双子竜は相田の技に影響されない。よって相田から離れようとも、仮に相田の命が尽きようとも、彼らが消える事はない。だからこそ、双子竜は平然と腕を振り下ろす事ができた。


 相田は双子竜に一歩も引かず、左右の手のひらを見せるように開くと、相手を覗き込むように笑って見せる。

「じゃぁ、俺と本気(マジ)でやってみるか? ぶっちゃけ、()の敵になる位なら、二度と復活できないよう粉々にするしかないんだが………さて、どうする?」

 相田は目の前で静止している大剣の横腹を何度か小突く。

 鈍く低い音が大剣から響く。

 双子竜は動かない。

 双子竜が、言い伝えの通り破壊と殺戮をこの場で再現するならば、相田は全力をもって倒すしかない。一方で、相田は彼らの力を求めていた。相田達の計画する魔王をより誇示させる為には、実力も存在もうってつけであった。


 双子竜はしばらく考えると互いに顔を合わせることなく、相田から大剣を遠ざけた。

「いいだろう。我らは破壊と殺戮ができればそれでよい」

「貴様と共にいれば………まぁ、退屈する事もないだろう」

 双子竜は両手の武器を地面に突き刺し、骨だけの腕を組んだ。

「我ら破壊と殺戮の双子竜。俺は兄のラハーム」

「弟のラフーム」

 相田は二人の自己紹介を聞いて、首を傾げる。

「………名前まで似すぎじゃないか?」

 見た目も名前も似ていると、最早区別がつかない。見えない所で立ち位置を入れ替えられたら、見当もつかなくなる。


 相田はポケットから、極太の油性ペンを取り出した。

「取り敢えず、額の部分に兄、弟って書いていいか?」

 双子竜は乾いた骨の音を立てながら首を左右に振り、全力で拒否した。

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