⑦技と創造が繰り出す戦い
「行くぞ魔王、我が必殺剣を受けるがいい！」
リコルが飛び出すタイミングに合わせて相田も地面を蹴った。
互いに電撃を帯びた一撃。相手の技に飲まれないよう、相田は大声と共に強い意思と覚悟をもって立ち向かう。
そして闇の技にふさわしい名前を叫ぶ。
「雷神剣！」「アビスブレイク！」
互いに上から剣を振り降ろし合い、激突する。
噛み合った剣から、白閃と漆黒の雷が互いに反発し、相容れず弾け合うように放出され続けた。
どちらも初撃は互角。
二色の雷は胸倉を掴み合うように互いを攻め、激しく何度も前へ後ろへと引き、絡み合っていく。
「おのれっ！ 安物の分際で！」
「騎士団の剣、折れるものなら折ってみろやぁぁぁっ！」
リコルの全力に相田も怒りの表情で応える。
雷だけでなく闇の威力を想像に混ぜ合わせたものの、未だに噛み合った剣が動こうとしない。
勇者にとって自信に満ちた技と相田が思い描いた技の想像力が拮抗し、互いに押し切れずにいた。
「ならばっ！」
相田は両手で握っていた剣から右手を放し、空いた鞘に手をかけた。
「黒き雷よ！」
鞘にも漆黒の雷を落とす。
「馬鹿な、二発目っ！？」
「アビス………ブレイク！」
相田は縦に嚙み合っていたリコルの剣の隙間を狙って一歩を踏み出し、二撃目をリコルの腹部、その側面から漆黒の雷を纏った鞘を押し込んだ。
「うおおおぉぉぉあぁぁっ！」
リコルが黒色の雷に全身を襲われる。
鞘による二撃目のイメージが『切る』よりも、鞘故に『押す』事の方が強く作用し、リコルは黒い爆発と同時に壁に叩き付けられた。
そして、全身から落雷に等しい電撃と熱線が彼の体を包み、光が落ち着くと体の至る所から細い煙が何本も上がっていた。
一方、相田が右手で握っていた鞘も、技の威力に耐え切れずに先端から黒炭となって崩れていく。
「分かったか………パクリじゃぁ、本物に勝てないのさ」
ついには握っていた部分も空気中に黒い粒子となって霧散していった。だが、相田は特に気にする事なく片手剣を利き手に持ち替える。
「………やはり魔王、流石に手強い」
右手から回復魔法を発動させていたリコルは、壁から出て来るや、何事もなかったかのように態勢を整えた。
想定内ではあったが、相田は面倒そうに舌打ちする。
神官の妹程ではないが、高度な回復魔法を使ったリコルの傷は、数秒後には火傷の跡すら完全に残っていなかった。衣服の焦げはそのままだが、鎧は新品同様で、ダメージが残っている事を感じさせない。
