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Lost12 優しき青年は、冷酷な魔の王になれるのか  作者: JHST
第三章 第二次王都防衛戦
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①急報来たる

 グランバル王が出発して三日目の朝。王都の政務を任されていた王女のリリアは、父親の代わりに定例となる朝の会議に出席していた。

「明日が調印式でしたね」

「はい王女殿下。順調に進んでいれば、明日の昼頃かと」

 王女の問いに、新しく任命された若い文官が柔らかい表情で答える。

 毎日王都へ到着している早馬の報告では、特に問題がない旨が変わらず伝えられている。初めこそ、いつ何が起きるのかと不安な面持ちで報告書を開いていたが、今では順調に事が運んでいるという安心感が、彼女の顔を随分と落ち着かせるようになった。


「王女殿下! 一大事です!」

「………何事ですか? まだこちらは会議中ですよ」

 必死の形相をした汗まみれの兵士が、許可を受けるより先に会議室の扉を開けてきた。

 彼は何かを報告したいのだが、息が切れており、口を開けても呼吸が優先されて声が出ず、上手く話せない。

 数秒かけ、ようやく兵士の男が胸に手を置いて呼吸を整えると、指を外へと向けた。


「こっ、国境付近に展開していた王国騎士団が! 攻撃を受けています!」

「何だとっ!」

 会議に出席していた白凰騎士団の団長が立ち上がり、一番の大声を上げる。他の者達もそれほど差を開けることなく立ち上がり、一斉に青ざめた表情へと豹変した。

 ただ、デニスだけは腕を組み、一言も口にする事なく座っていた。


「まさか、カデリア王国か!?」

 この時期に攻めて来る国など一つしかない。金竜騎士団の若き団長も、手足が冷えるような感覚に襲われる。

「間違いありません。敵は勇者を先頭に進撃………こちらの陣を突破し、この王都ウィンフォスを目指しています!」

 突破した勇者達を追撃しようにも、遅れて国境を侵してきた後詰のカデリア王国軍の対応に追われ、事前に配備していた二個騎士団の戦力だけでは、後続の足止めで精一杯だという。


「つまり、相手は初めから停戦など受ける気は毛頭無かった………そういう事ですか」

 リリアの戸惑いと不安が目に現れる。

 停戦合意という調印式を控えたこの時期でカデリア王国が戦端を開いた理由。その最悪の展開が彼女の頭をよぎった。

「何と………何と卑劣なっ!」

 相手のあまりの汚さに、リリアはテーブルにあった資料を払い落とす。

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