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⑥感動の再会?

 翌朝。

 フォーネが弱音を吐きながら動き回り、野営の撤収が無事に終わると、相田達は予定通りガーネットの掌に乗って再び移動を開始する。

 大きな街を避けながら飛び、途中休憩を挟みながらも順調に時間だけが過ぎていく。そして、夜になった頃、相田はカデリア王国の南西に位置する森の中で、不自然に点滅する明かりに気が付いた。

「見付けました」

「うむ。では降りるとしよう」

 ガーネットが森の中に走る一本の街道に降下する。街道は舗装もされていない土道で、明かりもない。普通ならば夜道としては選択されない場所なのだろうと相田は理解する。


 人気のない街道では、立派な馬車と一人の商人が王の到着を待っていた。商人は中東の商人のように髭を生やした小太りの中年男で、ターバンを巻いた頭が上がると、細目で作った笑みを見せる。

「お待ちしていましたアル」

「………そうきたか」

 相田が目の上を手で覆う。

「商人のサジーンといいます。短い間ではありますが、どうかよろしくお願いします」

「うむ、世話になる」

 早速サジーンが王を幌のついた馬車へと案内する。

「陛下には申し訳ありませんが、旅の行商人の馬車に紛れ込んで頂き、王都ブレイダスに入っていただきますアル」

「委細を任せる。余に構わず、自らの任務を全うするがよい」

 馬車に乗った王は胡坐をかいて木箱に背中を預けると、腕を組みながらサジーンに全てを委ねた。


「はて、予定では付き人は一人と聞いていたアルが」

 サジーンが相田の後ろにいる二人の亜人に目を向ける。相田はかくかくしかじかと簡単に説明し、王から二人を護衛と使用人として扱う許可を取り付けたと締めくくる。

「成程。蛮族は既にこちらの手にあると説明する事もできるアルね………流石は陛下」

 だが、商人に扮している間は、コルティを商人の使用人に、フォーネは馬車の護衛という身分で扱うとサジーンが指示を出した。

「そういえば………俺はまた、使用人のアイダ・ショーンですか?」

 必要があれば鎧は脱ごうかと相田は気を遣ったつもりだったが、サジーンは顔を赤くしていきなり怒り始めた。

「何を言っているアル! その使用人は、この前の仕事で勝手に逃げたのでクビにしたアル!」

 指名手配されているかもしれない名前を軽々しく言うなと怒鳴られ、さっさと竜を隠せと相田の背中が押される。

「そんなに怒らなくてもいいアル」

「何か言ったアルか?」

 サジーンに睨まれ、首を左右に振った相田は、口を尖らせたままガーネットに近付くと、木箱をから取り出した薬草を食べさせ、腰のポシェットから赤い宝石にガーネットを入れる。


 使役の契約を済ませた魔物を収納する使い捨ての宝石をロデリウスに頼んだが、それでも補充できたのは二個だけである。ガーネット程の巨大な生物を収める為には、それなりの大きさの宝石が必要であり、当然その価値は高い。この二個で金貨百枚を超えるのだから、無駄遣いはできない。


 相田は赤い宝石を元の場所に戻すと、そう言えばと馬車に戻りながらサジーンに声をかけた。

「サジーンさん、もう傷は大丈夫なんですか?」

「だから言葉には気を付けるアル!」

 またしても怒られる。

「私はそもそも怪我などしてないアル! まったく………ちなみに王都ウィンフォスで働いている知人のサージャなら、無事に傷が治ったらしいアル。助けてくれた人には感謝しかないネ!」

 結局、感謝されたのかよく分からない終わり方だった。

 相田はフォーネと同じく商人の護衛を依頼された冒険者という設定になった。そしてガーネットから降ろした木箱を馬車に載せ、出発準備を整える。


「それでは出発するアルよ!」

 フォーネとコルティは荷馬車の中へ、相田はサジーンの隣に座ると、彼の持つ手綱が波打つ腕の贅肉と共に勢い良く弾かれた。

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