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Lost12 優しき青年は、冷酷な魔の王になれるのか  作者: JHST
第三章 しかして青年に試練を与え給う
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③異質な者達

「足音!?」

 何かを踏み歩く音と金属が擦れる雑な音が聞こえた気がした。

 アイダは何を思ったのか、咄嗟に窓の下に姿を隠した。燃えていないはずの木壁がアイダの背中に、我慢できる限界の熱をじりじりと伝えてくる。

 気のせいかと思った物音は次第に大きくなり確信に変わる。そして、音の正体が鎧の擦れるものだと気付くまでの数秒が、まるで何分も時間がかかったような感覚に陥いる。


 脈拍が大きくなり、呼吸の回数が倍になる。

 アイダは胸元の服を強く握りしめた。

「落ち着け………落ち着くんだ! びびってんじゃねぇ!」

 小さな声で自分に言い聞かせる。

 さらに右の太ももを何度も叩き、恐怖に抗った。それでも抑えられない恐怖と興奮に、アイダは自分の手で口を塞ぐ。

 荒い鼻息が自分の指の上をかけ落ちる。


 アイダは勇気を振り絞り、足元の割れたガラスを手に取ると、それを鏡代わりに使って窓から外の様子を覗く事を思いつく。

 ガラスからうっすらと見えたものは、バケツのような鉄兜を被った三人の姿だった。どう見ても村人である訳がない。

 では旅人か、冒険者か。明らかにこの村とは無関係の存在であった。


「まさか、あいつらが火を………」

 無から沸いて生まれる怒りが、腰の剣に手をかけさせる。だが、すぐに手を開いて剣の柄から距離を取り、汗ばんだ手で空気を握りしめた。

「馬鹿かっ………今はおじさん達を探す事が優先だろう」

 自分に言葉を何度も投げつける。街のチンピラにすら勝てない人間が、どうやって全身鎧の人間に、しかも複数に立ち向かえるというのか。アイダは首を何度も振って雑念をかき消した。

 全身鎧の人間達の姿がガラスから消え、足音が家の裏側へと向かっていく。

 アイダは大きく息を吐いた。

「よし、今の内に表から外へ―――」

「いいいぃぃやあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 その時、少女の悲鳴がアイダの耳に届いた。

 聞き間違えるはずのない声。既に手には抜かれた剣が握られている。

 アイダは無意識に少女の声の下へと走っていた。


「何でだ! 何でここにいるんだよ!」

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