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Lost12 優しき青年は、冷酷な魔の王になれるのか  作者: JHST
第四章 勇者の名の下に
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⑤再侵攻

 冷えた空気が中庭で立つ相田達の肌を刺激する中、朝日を背にしてガーネットが王城の中庭へと戻って来た。

「ししょー! 向こうから、敵がいっぱいやってきたよ!」

 斥候としてフォーネとコルティが竜の両手から降りてくる。

『ご主人様、こちらが詳細になります』

「ああ、おかえり………コルティも助かったよ」

 相田はコルティから敵の情報が書かれたメモを受け取り、待機していたシリアと共に、その内容に目を通した。


 予想通り、カデリア王国軍が東の草原からこちらへと進軍している。数は七百程度と思ったよりも多くはないが、これだけでも既に王都の兵力を上回っている。

「申し訳ありまセン。勇者らしき人物たちの姿は確認できませんデシタ」

 コルティが相田の前で頭を下げた。

「いや、空から四人の姿を見つける方が難しいだろう? そんなに気にするなって」

 コルティの頭を撫でる。

 むしろフォーネだけで行かせていたら、詳細は全て擬音語となっていただろう。相手が反撃できない距離、王都からでは知る事ができない情報を得られただけでも十分であった。

「これだけ分かっていれば、少なくとも住民の避難と騎士団の呼び戻しを提案できる」

「はい」

 シリアの言葉に相田が頷く。


 文官達による目立った動きは未だない。

 この後の朝議で、彼らがどのような発言や提案をしてくるか、相田達には予想できないが、敵が王都へと進行していると分かった以上、文官達は騎士団を呼び戻す方針に反対する事はできない、そこまでは確信する。

 さらにグランバル王は未だ体調が回復せず、リリア王女も先日から国王の部屋を行き来するだけで、それ以外の公務に姿を見せていない。

 もしも文官達がカデリア王国との繋がりを持っているならば、王国騎士団が戻る前に何かを仕掛けてくるはず。相田もシリアも既に同じ結論に至っている。


「取り敢えず、勇者達は別動隊として動いている可能性があると報告した方がいいだろうね」

「はい。引き続き俺達はここで待機しています。何か分かったら教えてください」

 つい先程届けられた事だが、朝議に相田の出席が認められなくなった。

 相田の出席を特例として認めてくれていた王も王女も出席できず、文官達は権限も役職もない一兵士を朝議に参加させる事を『規律が乱れる』と、ここぞとばかりに反対してきたのである。武官達の中にも相田の存在を快く思っていない者が一定数おり、反対する声はあっても積極的に賛成を唱える者はいなかった。

 故に第十騎士団の団長代理として副長のシリアだけが出席を認められている。既に話を共有している相田にとっては、特段目くじらを立てる事ではなかったが、文官達の動きが怪しい事をより確信する材料になった。

 

 今の相田にとって最大の懸念は、勇者達といかに戦うか、この一点のみである。

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