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②父と娘、王と王女

 扉を開けると、そこには王宮の家臣や武官、そして玉座に座るグランバル王がいた。

 王を含め、予告なく大扉が開く音に何事かと全員が視線を向ける。そして扉を開けた者の正体を見て、目を大きくさせた。


「お父様!」

「まさか、リリアか! だが、どうしてここに!? いや、何故戻ってきた!」

 家臣団の間を走り抜け、リリアは立ち上がった父親の胸に飛び込んだ。

 グランバル王は始めこそ娘に向けて声を荒げたが、久々に見る娘の姿に険しかった王の顔が緩んでいき、ついには父親の顔で娘を抱きしめる。

 他の家臣や武官達も、王女の無事な姿に安堵し、緊張した顔が和らいでいった。

 グランバル王は抱きしめていた腕をほどくと、再び王の顔に戻って言葉を発する。

「この馬鹿者が………余の手紙を読んだであろう」

 だがリリアは王の目を鋭く見つめ返す。

「お父様………まだまだ未熟ではありますが、私も王族に名を連ねる者です。王国に仕えてきた忠臣や民を見捨て、父を見捨て、唯一人おめおめと生き残った者が、どうして皆の前で王の娘と名乗れましょうか?」

 

 その言動は、まさに王女に相応しい立ち振る舞いであった。

 言葉の一つ一つに、二十歳に満たない少女の言葉とは思えない重みが伝わってくる。王は彼女の言葉に何も答えず、ただ娘の姿をじっと見つめるに留めていた。

 その視線が、謁見の間の扉近くにいた相田とフォーネに移る。

 リリアは簡単に二人の事情を父親に説明すると、王は玉座の階段を降り、相田達に近付いていく。文官や武官が近付くのは危険だと体が動くが、王の後ろに立つリリアが手を伸ばし、阻んだ。


 王が相田の前に立つ。

「相田よ。我が娘をよく守ってくれたそうだな。礼を言おう」

 本来ならば、跪かなければならない場面であったが、相田は敢えて直立のまま王の言葉を受け止めた。

「リリアは俺の大切な友達だからな。誰かの命令でなくても守るさ」

 王女を呼び捨てにした言葉に、何人かが怪訝な顔で口を開けたが、それもリリアに止められる。

 

「………友か。貴様は、娘を友と呼ぶのだな」

 相田の不遜な態度、自分の娘が呼び捨てにされたにも関わらず、グランバル王は一切を咎めなかった。それどころか、背後の家臣達に気付かれない程度に肩を縦に揺らし、小さく笑っていたのである。

 王は『結構』と大きな声と共に胸を張ると、相田の肩を力強く叩いた。

「ならば相田よ。娘の父として問うが、この後貴様はどうするつもりだ?」

 何かが吹っ切れたように相田に尋ねる。


 相田もその言葉に乗るように、自分の腰にかけられている鞘に手を乗せた。

「当然。友人を泣かす奴らを、見返してやるのさ」

 未だに王が自分にしてきた事を相田は忘れていない。だが、今はそれを原因に揉める必要はないと割り切る。

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