⑧お前はもう、死んでいる
「まず一つ!」
崩れかけた槍兵を踏み台にしてフォーネは高さを稼ぎ、飛び込んで来た狼の骨格を真上から急襲、背骨を割るように地面に踏みつけた。
「二つ!」
だが敵はまだ多い。左右の配置についた弓兵が互いに射線軸をずらしながら弓を放つ。フォーネは飛んできた矢を左右それぞれの人差し指と中指の二本の指で受け止めると、その弓の勢いと体の半回転を利用して受け止めた矢を手首のスナップを利かせてナイフのように投げ返す。
「その程度の矢なら、止まって見えます!」
近接主体の弱点である遠距離の攻撃に対処する為、相田が昔見た本に乗っていた一子相伝の拳法家の技をフォーネに見様見真似で教えた技だった。投げ返された矢は、左右の骸骨の頭部と、胸部を貫き、粉砕させる。
「………もはや、退魔士というより武闘家だな」
相田は遠回りしてリリアと合流し、無双と化している兎娘を半ば呆れた目で追いかける。
二人が瞬きを一回している間に、骸骨が二体以上塵と化していく。さらにフォーネの攻撃の終わりの動作や回避、防御の動作が既に次の攻撃の一歩目となっていた。まるでシリアの素早さとザイアスの剛力を足しても、なおお釣りが来そうな勢いであった。
「無茶苦茶だ」
「………相田、一体どういう訓練を施したのですか?」
リリアに不審がられる。
物の数分としないうちに、骸骨達はバラバラになって地面に落ちていく。




