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Lost12 優しき青年は、冷酷な魔の王になれるのか  作者: JHST
第十章 フォーネの大冒険
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⑦墓所

「ここが終点のようです」

 フォーネが止まった場所は松明でも届かない広い長方形の空間だった。彼女が言うには、暗くて見えないが奥には祭壇があり、証が置かれているらしい。

 だが、この部屋の空気には、前に踏み出しづらい違和感があった。


「何かいるな⋯⋯⋯」

 相田は地底湖の洞窟と同じように掌の火を握りつぶし、できた光の粉を床に落とす。光の粉は床と壁を這うように進んでいき、空間全体が見渡せるようになった。

 広さは学校の体育館程度、全体が照らされた事で、一番奥には小さな祭壇が見えた。しかし、夜でないのにも関わらず、黒い霧がまるで空中に墨汁を撒いたかの様に、相田にもはっきりと見えていた。


「相田、ここは………何だか嫌な感じがします」

 リリアに黒い霧は見えていないが、違和感には気付いている。例えるなら、街灯のない夜の中を一人で歩いている。何も見えないが、何かが動いている気がする。窓に映る何かの影も、非常用の赤灯の影も動いているように見えてしまう、そんな感じであった。

 しかも黒い霧は魔女の森よりもずっと濃い。相田の目が細まっていく。


「………フォーネ。準備はいいか?」

 剣の力を開放するには耐性のないリリアから十分に離れる必要があった。相田は魔剣の柄を握りながら黒い霧をかき分け、部屋の奥へと歩いていく。

 そして、入口で立つフォーネに体を向けた。

 一方の彼女も背負っていた荷物をリリアに預けると、一人で前に出るや、手首と足首を回し始める。


「はい。お願いします!」

 最後に腕を回すと、フォーネはそのまま腰を落として待つ。

 相田は魔剣を抜き放ち、力を開放した。

 魔女の森の時とは異なり、すでにかなりの濃さとなっていた黒い霧は、それ程力を開放しなくとも、明確な意思を持って空気中でまとまり始める。それらは小さなものから、やけに大きなものもあったが、相田はそのまま黒い霧に集中し、自身のイメージを混ぜ合わせていく。

 そして、黒い霧が石畳や壁に吸い込まれるように入っていくと、相田は静かに声に力を込めた。


「………ネクロマンス」


 瞬間、石の壁や床を突き破って様々な魑魅魍魎が実体化する。剣を持った人型の骨格、他にも弓や槍、盾を持つ骸も現れる。中には獣の牙を持つ人型や狼のような四つ足のむくろも現れた。

 そして部屋の最奥では大きな黒い霧が生み出した巨大な骨格が堂々と構えている。その大きな存在は声の代わりに空気を振動させ、その強力な力を周囲に撒き散らした。


「ド、ドラゴン。ですか?」

 一番驚いていたのは部屋の入口に立っていたリリアだった。

 骨格だけとなった竜は、以前の姿と変わらぬ畏怖を等しく生み出す。ガーネットと比べれば大分小さいが、それでも十分な迫力がある。

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