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Lost12 優しき青年は、冷酷な魔の王になれるのか  作者: JHST
第四章 歯車は互いに踊る
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⑬逃げた先は

「こうなりゃ仕方がない。二手に分かれよう………お前、バドス邸は分かるか?」

「バドス邸? いえ………」

 相田が首を左右に振ると、ガウは胸元から小さな紙切れを取り出した。

 そして、それを相田に手渡す。

「ここに地図が書いてある。俺が匿ってもらおうとしている場所だ、来れそうなら来い。俺はこのまま、あいつらを引っ張ってやるから、お前はそこの角を右に曲がれ。その先は入り組んだ道になっているから、お前でも簡単に振り切れるはずだ」

 通りの先を見ると、右に曲がる路地が見えてきた。

「じゃ、気を付けてな」

 ガウはそう言うや、相田を置いて目の前の道をまっすぐに走り抜けていく。


 相田も言われた通りに右へ曲がり、細い路地を進んでいく。路地は横に大人二人が通れない程に狭く、直線状に続いていた。

「………おかしい」

 一向に進んでも入り組んだ道など見えず、分かれ道すらない。、それ所か高い壁を前に、道が途絶えていた。

「何てこった………入る道を間違えたか?」

 相田は行き止まりにあったゴミ箱の前で足を止める。

 遅れてやってくる酷い匂いに、腕で鼻を塞ぐ。

 目の前のゴミ箱の蓋は僅かにずれており、そこから人の手でがはみ出ていた。手の周りでは複数の蠅が回り、既にその手の持ち主の状況を証明している。


「………マジかよ」

 こんな時に、と相田は目を細めた。

 さらにタイミングが悪い事に、遠くから金属がぶつかり合う音が大きくなっている。

「冗談じゃない!」

 一気に絶体絶命へと追いやられた。

 相田は左右にある建物のドアノブに手をかけて回してみるが、どちらも半周する前に動かなくなる。

「くっ!」

 次に壁を見上げた。

 路地を越えようにも、建物自身が壁となっているこの道は、まるで城壁であり、とてもではないが今の相田に上れる高さではない。

 万が一にも、警備兵と鉢合わせでもしたら、どう見られ、思われるか。

 相田の額から一筋の汗が流れ落ちた。

 目の前の死体、そして先の事件で殺された使用人と同室だった相田。あの事件と関連して考えられる事は疑いようがない。ガウの言う通り、使用人の人権はないに等しい。冤罪であっても、拷問の類が待っている可能性もゼロではない。

 

 気持ちだけが焦る。

 相田は左右のドアを強く蹴り込んだが反応がない。それどころか、金属音が激しくなった。

 逃げ場がない。

「くそ………あと一日だっていうのにっ!」

 歯を食い縛る。

 兎にも角にも、ここで捕まる訳にはいかない。相田は警備兵と戦う覚悟を決め込んだ。狭い路地であれば、背後を取られる心配もなく、苦手な集団戦法も用いられる事もない。他国の兵と問題を起こしてしまうが、捕まるよりはまだ良いと、相田は意識を集中させる。


 その時、相田のすぐ右の扉が静かに開かれた。

「え? うぉぁっ!」

 相田は胸元の服を引っ張られ、部屋の中に吸い込まれる。

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