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Lost12 優しき青年は、冷酷な魔の王になれるのか  作者: JHST
第三章 夢見る魔法少女じゃいられない
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⑧クレアからの挑戦状

 会長と呼ばれた赤毛の女性は、自分をクレア・バージルと名乗った。

 カデリア王国では名門中の名門である貴族の令嬢、この職業訓練学校の生徒会長にして、魔法使い組の首席卒業候補。加えてミス魔法使いという企画にも毎年優勝しているという。

 周囲の女子学生達が勝手に説明し、相田の耳に入っていく。解説モブ、有難し。


 彼女は相田に対し、色々と不手際があったと謝罪。メニューにはない『勇者級』への挑戦を紹介し、相田を別の場所へと案内した。

 数分歩いて連れてこられた場所は、大きな円形の空間。スペインの闘技場(コロッセオ)やローマ劇場のような円形で観客席よりも低い地面、階段状に作られた無人の客席。地面は草木や水たまり、さらには大きなかがり火など、まるで四属性を四隅に象徴させたかのような造りになっている。


 クレアは指先だけが出る白い手袋をはめると、相田に向けて細い指を向けた。

「あなた、いったい何者ですの?」

 急に口調が変わる。

「いやいやいや、単なる旅人ですよ」

 心臓が一瞬跳ね上がった相田は、思わず帽子を深く被り直した。

「旅人? まぁ、いいですわ。『勇者級』に相応しい方法で試してみる事にしましょう」

「………拒否権がない」

 どうやってシエン達に怒られないように撤収すべきか、相田の脳裏に先輩の引きつく顔がうっすらと見え始めていた。


「いや、まてよ?」

 はたと思い出す。

 この学校で首席級の魔法使いならば、その力量を調べる事は立派な任務といえる。相田は初めてロデリウスの存在に感謝した。

 とはいえ、相手は唯の学生、そして今日は学園祭。仮に何かあったとしても、こちらの身分が明らかになるまでには祭典が終わっているだろう。相田はクレアの精神集中に合わせ、自分自身も意識を集中させる事にした。


「さぁ、行きますわよ!」

 彼女の右手から三本の炎の矢が放たれる。炎は上と左右の三方向に分かれ、緩い曲線を描きながら相田へと向かう。

 だが放たれた炎の矢はシリアのナイフより遥かに遅い。相田は後方に大きく飛び退け、それぞれ矢が一点に合流して自滅する事を狙った。

「甘いですわ!」

 クレアの右手が空気を掴むように強く握られる。

 三本の矢は一点に交わった瞬間、合体、巨大化した。そして一本の矢となった炎は方向を修正し、相田を直線的に狙い直す。

 口調こそ高飛車ってはいるが、クレアは二手、三手先をしっかりと把握していた。先程の矢よりも格段に速くなっており、避けるタイミングを崩そうとも考えられている。

 後方に飛んだだけでは、回避し辛い魔法であった。

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