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Lost12 優しき青年は、冷酷な魔の王になれるのか  作者: JHST
第三章 夢見る魔法少女じゃいられない
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⑤初心者コース

「お客様はどのコースにされますか?」

 そばかすで金髪ツインテールの女子学生が、順番になった相田に不必要な前かがみで声をかけてきた。

 相田はやや視線を下げ、全てを理解した上で口を開く。

「あ、初心者コースで」

 上級者コースは完全な釣り(フェイク)。確率論から、相田は最も堅実なコースを選び、やや残念がる彼女に一枚の銀貨を手渡した。

「それでは次の方、入ってくださーい!」

 眼鏡をかけた女子学生が入口の幕を開け、複数の参加者がそれぞれのコースに分けられていく。上級者に向かっていった哀れな参加者は四名。相田は同情しつつも心の中でくっくと笑ってやった。



「それでは、初心者コースの皆さん! 片手か両手、どちらでも大丈夫です! 掌を前に出して、炎を想像しながら力を解き放ってください!」

 中学生くらいの背丈の女子学生が、片手から炎を出して実演する。小さな女の子ですら簡単に魔法を出せた事に、周囲から歓声が上がった。

「それでは皆さん、制限時間以内に目標の藁人形を燃やしてください! どうそー!」

 女子学生の魔法使いは、初心者コースに参加した二十名を横一列に並ばせ、五メートル先の藁人形と対峙させる。そして立たされた参加者は、それぞれが様々な格好で手をかざし、次々と炎を放っていく。


「おぉ、おぉ。出てる出てる!」

 相田の隣では自分の三倍は生きていそうな老人が両手から炎を捻り出していた。彼は初めて出た力に、思わず掌を見つめてしまう程に驚いている。

 だが藁人形は燃えなかった。炎が外れれば仕方がないが、中には魔法が命中しているにも関わらず、燃えない人形が存在していた。

「燃えない人は集中力が足りません! 頑張って、もっともっと集中してくださーい!」


―――集中力。

 

 相田は人差し指を前に突き出し、藁人形に照準を定めた。炎を出す事はこれまでの訓練で散々慣れている為、あとは藁人形に炎が当たって燃える事だけを想像すればよい。

 妖怪退治をする高校生の技をイメージしつつ、相田は指を拳銃のように形作る。

「フレイムショット!」

 相田の言葉を引き金に、野球ボール程の炎が指先から放たれた。

 炎の球は藁人形に見事命中し、簡単に燃え始める。

 周囲の参加者達が、相田の成功に声と拍手の音を立てて祝福した。

「あ! おめでとうございます! えっと、二十番さん………あれ?」

 司会役の女子学生も祝福を贈ろうとしたが、何を感じ取ったのか、スカートのポケットから小さな紙きれを取り出して開くと、それを何度も見て首を傾げ始めた。

「???」

 相田もその姿を見て不安になり、素直に喜べずにいた。

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