第九話:世界の均衡が崩れるって、それ俺のせい!?
「いやいや、ちょっと待て!」
俺は思わず両手を振った。
「世界の均衡が崩れるって、どういうことですか!? 俺、何もしてないですよ!?」
「ですが……」
聖女様は神妙な顔で俺を見つめる。
「あなたは、すべての神々の加護を受けた唯一の存在。そんな者が現れること自体、本来ありえないのです」
「だからって、俺のせいじゃないでしょ!? 転生させたのは神々ですよ!?」
「……それは、そうなのですが……」
聖女様は、どこか言いづらそうに口を閉じた。
「まぁまぁ、落ち着いて話しましょうよ!」
とにかく、まずは誤解を解こう。
俺はゆっくりと深呼吸しながら、できる限り穏やかな声で続けた。
「俺、本当にただのサラリーマンだったんです。勇者とか、英雄とか、そういうの向いてないんですよ」
「……ですが、神に愛された者として、あなたはすでに王国中の注目を集めています」
「えぇ……」
まただ。
また俺の知らないところで、勝手に話が進んでる。
「今、王宮でも、あなたをどう扱うべきか会議が開かれているはずです」
「え、俺の人生、もう勝手に決められちゃってるの!?」
俺の意思、どこ行った!?
そして、まさかの王宮行き
「とにかく、あなたは王宮へ向かわなければなりません」
「いやいや、待ってくださいよ!」
「今さら逃げられません」
「そもそも俺、逃げようとしてないですからね!?」
……って言いたかったけど、
この状況、どう考えても俺に選択肢ないよな……。
「……はぁ、わかりましたよ」
こうして、俺は聖女様に付き添われ、王宮へ向かうことになった。
異世界転生——静かに暮らしたいだけなのに、また大騒動の予感しかない。
(第九話・完)