第四話:馬車でのんびり移動……できるわけがない!
「さぁ、乗れ」
牢屋から解放された俺は、兵士たちに連れられて街の外へ出た。
そこには豪華な馬車が待っていた。
「おぉ……異世界の馬車、初めて見た」
漆黒の木製ボディに、金の装飾が施された立派な馬車。これ、絶対偉い人用だろ。
「いや、こんなの俺が乗っていいんです?」
「王都の聖女様からの要請だからな。それ相応の待遇になる」
待遇はいいけど、状況が納得いかねぇ!
そもそも、俺はまだこの世界のことを何も知らないのに、いきなり王都行きとか無茶すぎる。
「おい、行くぞ」
「……はぁ、わかりましたよ」
馬車の扉を開けると、中はふかふかのクッション付きの座席。
おお、乗り心地はいい!
これなら移動中に少し休めるかもしれない。
「よし、せめて王都に着くまでのんびり……」
俺が座席にもたれかかった、その時。
「——ギャアアアア!!」
「!?」
突然、外から悲鳴が聞こえた。
「おい! 何があった!?」
俺が馬車の窓から覗くと、兵士の一人が地面に倒れ込んでいた。
その背後には、黒いフードを被った謎の集団——
「追いはぎ!? いや、刺客か!?」
「相手は何者だ!?」
「わからん! だが、かなりの手練れだ!」
兵士たちが剣を構える中、フードの集団の一人が前に出た。
「……神に愛されし者、か」
「……は?」
俺を見てそう言った。
「な、なんですか?」
「お前には消えてもらう」
「いやいやいや!! まだ何もしてないんですけど!?」
なぜか俺を狙って襲撃が始まった。
なんでこうなるんだよ!?
「くそっ、仕方ない! 逃げるぞ!」
俺は馬車の扉を蹴り開けると、無理やり御者の横に座った。
「すまん、全速力で逃げてくれ!」
「へ!? えっ、あ、は、はい!」
御者は混乱しつつも、手綱を強く引いた。
バゴォン!!
「うわあああああ!!」
馬車は急加速し、俺は座席から転がり落ちる。
「やべっ、振り落とされる!」
必死に馬車にしがみつく俺。
後ろでは、兵士たちと刺客が戦闘中。
「頼むから、俺を巻き込まないでくれえええ!!」
こうして、俺ののんびり馬車旅は開始3分で崩壊した——。
(第四話・完)