第三話:牢屋からの脱出方法が、まさかの……
「……なんで俺、牢屋にいるんだろう」
異世界転生 → 砂漠で発見 → 即職質 → 即拘束 → 牢屋入り
この流れ、おかしくない?
普通、異世界転生したら「おお、勇者様!」とか言われて歓迎されるもんじゃないの!?
なのに現実は冷たい石の床、固い木の扉、鉄格子。
「はぁ……マジで運が悪い」
牢屋の中には俺以外に誰もいない。
どうやら、サルディア王国のどこかの街にある駐屯地らしいが、説明もなく**「怪しいから」**という理由で閉じ込められた。
しかも、食事も水もまだ来ていない。
「これって、人権問題じゃない?」
いや、ここ異世界だし、人権とかあるかわからんけど。
「さて、どうするか……」
このままじっとしていても仕方ない。何とかして外に出ないと。
でも、どうやって?
牢屋の鉄格子はしっかりしてるし、看守もすぐそばにいる。
ここは慎重に——
「おい、新入り」
突然、牢の外から声がかかった。
「ん?」
そこにいたのは、昼間俺を捕まえた兵士の一人だった。
「運がいいぞ。お前を釈放してやる」
「……は?」
いやいやいや、展開早くない?
「何かの間違いだって気づいたんですか?」
「まぁな。お前、王都に行くらしいぞ」
「……え?」
王都? 俺が?
しかも、なんか流れが速すぎない?
「待て待て、何がどうなってそうなったの?」
「聖女様が、お前に会いたいとおっしゃった」
「……」
俺は、聖女? という単語に思考を持っていかれた。
「……いや、俺、聖女様と何の関係もないんですけど?」
「知らんが、お前が神に愛された男らしい って噂が広まってな」
「…………は?」
どこ情報!? 俺、言ってないよな!?
まさか、神々が勝手にバラしたんじゃ……?
いや、あり得る。俺の意向なんて完全無視だったし、やりかねない。
「まぁ、とにかく牢から出られるのはいいことだろ? 文句あるか?」
「……ないっす」
こうして、俺は牢屋を出ることになった。
しかし、それは新たな騒動の始まりでしかなかった——。
(第三話・完)