ご苦労様でしたっ。
来る日も来る日も、人魂を取り出しては狩っていく。次第に、ミミカの鎌は性能が上がってきたのか、一振りで魂の抽出と消滅を同時に行えるようになっていた。
対象は人だけに過ぎなかった。すなわち、犬、猫、鳥、魚――ありとあらゆる命あるものを、ミミカは無慈悲に葬っていった。もうそこに、大した感情はなかった。ただの自己快楽ともいえる。
「ミミカさん」
声がして振り返ると、今となっては懐かしい。ミミカをこの天職へと誘ってくれた死神がいた。
「あれ、久しぶりだね。後ろの死神さんたちは、誰?」
死神の後ろには、似ているが少し形の違う死神が何人もいた。
「彼ら、あるいは彼女らも死神ですよ。ただ、あなたが担当区域以外もどんどんと仕事をこなしていくせいで、やることがないのです」
「あ、そう……。ごめんねー」
もうすでに、日本には生きた人間よりも死体のほうが多い。突然死は日本中を恐怖に陥れるには十分すぎる恐怖だった。
「ミミカさん、わたくしは死んだものの魂のみを狩るように説明したはずですが……」
「だって、めんどくさいじゃーん」
「冥界も、パンク寸前です。どうか、こちらの話に耳を傾けてください」
「うるさっ、そんなこと言ってるとあんたたちも狩るよ」
ミミカが鎌を取り出していうと、死神はまるで鼻で笑ったかのように答えた。
「死神は死神を狩れません。魂が視えないでしょう?」
「わたし、何万という人を狩ってるうちに鎌以外も強くなった気がするんだ。なんか、目を凝らすと分かるんだよね」
「分かるって?」
「視えるよ」
「えっ、マジで?」
「さよーなら、死神さん」
ミミカは慣れた手つきで鎌を振るう。「あ、ちょっ」っという断末魔が聞こえた気がしたが、死神はまるで霧のように姿が消えていった。
後ろに控えていた他の死神たちも蜘蛛の子を散らすように逃げ去っていった。
ミミカは笑顔のまま、鎌を振るって追いかける。もう誰も、彼女を止められるものはいなかった。
――次にミミカが現れるのは、あなたの目の前かもしれません。