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ご丁寧に、どうも。

 薄れゆく意識のなかで、ミミカは思った。


 (やっば、やりすぎた……)


 彼氏と喧嘩した夜。寝付けずにいたミミカはいつも通り、睡眠薬に頼ろうとしていた。しかし今日は土曜日で、時刻はまだ零時にもなっていない。ミミカにとっては宵の口だ。


 カッターナイフを取り出して、腕に当てる。軽く切ると、ぷくっと血が沸いてくる。指で押し込むと更に滲んでくる。だがその光景も、最初こそ背徳感や罪悪感で悦に浸れたが、いまとなっては物足りない。


 どうしたらもっと血が出るのかな、とミミカは考える。そういえば注射するときは、肘の内側にある太い血管に刺す気がする。どんな感じだったか思い返そうと試みるが、そういった細かいこと、まどろっこしいことを考えるのは性に合わない。


 迷ったらまず行動。ミミカはカッターの刃を躊躇なく刺した。


 どくどくと溢れる血は瞬くまに肘を伝い、床に滴り落ちる。思ったよりも勢いがあってミミカは引きつった笑いを浮かべた。


 でもそれは最初だけだった。だんだんと痛みが増してきて、次第に冷静になってくる。血が水たまりのように溜まっているのを見ると、急に視界がぼやけた。


 (気持ち悪っ……)


 気付けばカッターも手放して、ミミカはその場に突っ伏していた。瞼が重たい。腕に力が入らない。吐き気がする。頭痛がする。足先が冷たい。でも、心地良い。


「お取込み中すみません」


 どこからか声が聞こえた。はっとして瞼を開けると、ミミカは部屋のなかに浮かんでいた。


「え?」


 見下ろすと、自分がいる。腕から血を絶え間なく流して、だらしなく横たわっている。これは――幽体離脱?


「あの、お嬢さん」


 再び声が聞こえて振り返ると、真っ黒な布に覆われた得体のしれない存在がいた。


「……だれ?」


 ミミカは現状を理解できないまま質問する。


「わたくし、死神をやっております。以後お見知りおきを」

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