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甘い毒 

作者: ぺいたろう

甘い毒


君子は夏でも毛皮をまとう

但し中は下着だけ

そうして妄想するのだ


毛皮の中で愛される事を

毛皮の中で愛される事を


君子は視覚を信じていない

はり憑く毛皮を素肌で触れて

はじめて確信する


自分の境界を

自分の境界を


己の指で左手をたどる

触れた先からラインは失せて

甘い闇夜に落ちていく


君子は男の手を恐れる

芯まで溶けてと願いながら

触れた刹那に嗚咽する


毛皮の中で解け合いたいのに

毛皮の中で解け合いたいのに


君子の毛皮は8年前

無知の時分に全てを捧げ

尽くした悪魔の愛の遺産


朕は悪魔に待ちぼうけ

朕は悪魔に待ちぼうけ


己の指で右手をなぞる

触れた先から世界は崩れ

木馬の心に帰結する


君子の毛皮は液臭い

悪魔と重ねた愛の異臭

髄から欲したエッセンス


それは

君子を犯す甘い毒

君子を犯す愛の毒


君子は今日も毛皮を纏う

甘き香りが酸味を帯びて

二度と貴方は来なくても


優しい毒に包まれて眠る


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