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6・騎士様と二人①


 え? キス?


 跪いて私の手の甲に口付けるジェラルドさんの姿は、さながらお姫様に忠誠を誓うおとぎ話の騎士のようで……。ってちょっと待って、理解が追いつかない。


「は、え、ちょっ、ジェラルドさんっ⁉︎」


 非常に情けないことに、私の口からは混乱して慌てふためくものしか出ない。

 しかしジェラルドさんは私の素っ頓狂な声を気にする素振りもなく、元の立ち姿に戻る。ゆったりとした仕草で自身の胸に片手を当てると軽く微笑んだ。


「どうぞ、俺のことはジェラルドと呼び捨ててください。神子様」


「ああ、私のこともニコラスと呼び捨てていただいて構いません」


「い、いやいやいや……」


 16の小娘が、自分より明らかに年上の男性を呼び捨てにするなどかなり無理がある。

 しかも初対面。きつい。

 しかし、男性二人は私が呼び捨てにすることになんの抵抗もないようだった。むしろ、さん付けする方がおかしいとでも言いたそう。


「どうか、お願いいたします」


「あ、う……ジェラルド、ニコラス?」


 ジェラルドの有無を言わさない雰囲気に押されて、私は絞り出すように二人の名前を口にした。

 もう、やけだ。

 あとは野となれ山となれ。


「はい」


 ジェラルドが嬉しそうに返事をする。

 まるで、主人に名前を呼ばれた犬のようだと思った。

 って、明らかに自分より年上の男性に対してこの表現は失礼な気がするけれど。


「ニコラス様、お話中のところ失礼いたします」

 

 第三者の声が割り込んできてそちらの方へ視線を向ければ、この祭壇(?)のような部屋の入口に屈強な体躯(たいく)の男が一人立っていた。

 房飾りのついた上着にブーツといった、ジェラルドと似た服装をしている。この人も神殿騎士だろうか。


「どうかしましたか?」


「研究者の方がお見えです。ルーチェ神のことで急ぎ話があると……」


 ……ルーチェ神?

 それって、あのおかしな神様のこと?


 ニコラスと騎士の男性の会話から漏れ聞こえてきた言葉に、私は少し首を傾げた。

 あの神様に関する急ぎの話。

 ニコラスの雰囲気が少し固いものに変わったように思う。あまり良い話ではない気がするのは、私の気のせいだろうか。

 

「そうですか……分かりました。すぐに行きます」


 ニコラスは騎士の男性にそう告げると、少し困ったような顔でこちらを振り返った。


「申し訳ありません。私は急ぎの用事のため席を外させていただきます」


「あ、はい」


 ニコラスを引き止める理由もない。

 私の返事を聞くと、ニコラスはジェラルドの方へ視線を移した。

 

「ジェラルド、神子様をお部屋にご案内して差しあげてください。あとのことはあなたに任せます」


「はっ!」


「それでは神子様、御前を失礼いたします」


 ニコラスはバタバタとした様子で、騎士の男性とともに去っていった。

 あとには、ニコラスに向かってピシッと敬礼をした状態のジェラルドと私が残される。

 ちらりとジェラルドを見上げると、にこりと爽やかな笑顔を返された。


 ええーー……。

 初対面なのに二人きりにされても困るんですけど……。

 

 


 

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