表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/72

18・日常になりつつある非日常①


 ふっと意識が浮上する。

 ゆるりと周囲に視線を向ければ、そこは私が眠りについた、異世界にある神殿の自室だった。


 ――神様のあの話は、本当なの……?


 濃紺に星のような光がきらめく不思議な精神世界で、神様が言っていたことを思い出す。

『僕は消えかけの神様』なのだ、と。


 神様は、私を元の世界に戻すための力を溜めている、とも言っていたが、本当に大丈夫なのだろうか。

 自分がちゃんと元の世界に戻れるのかも不安だが、あの神様がいなくなるかもしれないということがなによりも衝撃的だった。


 ――誰かに相談したいけど……。


 神様のことを相談なんて、元の世界でしようものなら病院に連れていかれかねない内容だ。

 だが、しかしここは異世界。

 しかもここは宗教施設。この手のことに詳しそうな知り合いにも心当たりがあった。


 ――ニコラスに聞いてみようかな。


 私がこの世界に来た時に、ジェラルドともに出迎えてくれた神官様。

 彼なら、神様のことについて何か知っているのではないだろうか。


 思い立ったら即行動!


 私はベッドから下りると、早速身支度を始めることにした。


 ネグリジェを脱ぎ捨て、いつもの制服を着る。

 元の世界にいるときは制服なんてなんとも思っていなかったのに、今は心の支えだ。

 この制服だけが、私が異世界から来たことを証明するものだから。


 ――よし、いざ出発!


 準備が出来た私は、意気揚々と部屋のドアノブに手をかけた。


「おはようございます、神子様」


「……どわっ!」


 びびび、びっくりした……!!

 なんでこの人、ドアのすぐ横に立っているの!?

 昨日といい、今日といい……。この騎士様、色んな意味で心臓に悪すぎる!


「お、おはよう」

 

 まさか、ドアを開けてすぐにジェラルドがいるとは思わなかった。

 完全に出鼻をくじかれた気分でどきどきする心臓を押さえていると、ジェラルドは私の顔をじっと見つめてきた。


「な、なに?」


 どうしたのだろうか。

 イケメンにそんなに見つめられるのは恥ずかしいのだけど。


「……いえ、朝から神子様は可愛らしいですね」


「は……っ!?」


 今、なんて!?

 さらりとジェラルドが告げてきた言葉が信じられない。

 ジェラルドを見返すと、彼はただただにこにことしていた。そこに他意なんて感じられない。


 ――ああ、これはきっと、小動物とか年下に対する『かわいい』なんだろうな。


「あ、ありがと」


 どういう意味であれ、こんなイケメンに『かわいい』なんて言われるのは慣れていなくて、どうしても照れてしまう。だが、向こうはきっと深く考えていないだろうし、社交辞令のようなものなのだろう。

 決して悪い気はしないが、なかなか複雑な心地だ。

 下手に追求したら墓穴を掘りそうで、私は気にしないことにすることにした。

 

「そ、そういえば、ニコラスがどこにいるか知ってる?」


「ニコラス様ですか? 今の時間でしたら、食堂で朝食を召し上がられている頃合いだと思いますが……」


 なるほど。ちょうど朝食の時間だし、私も一緒に食べさせてもらおう。

 食べながら、少しでも話が聞けたらいい。


「じゃあ、私も食堂に行こうかな。お腹も空いたし……」


「何かニコラス様に御用でもおありですか?」


「ああ、うん……、ちょっと聞きたいことがあって」


 不思議そうに尋ねてくるジェラルドに、私は曖昧に返事を返した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ