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K&K:胡桃ちゃんと暦ちゃん

暑がりな国のひんやりデザート

掲載日:2023/11/22

電気が無い頃の昔話。

海の無い内陸の国が舞台。

山に囲まれた国は夏はとても暑くなる。

王様が国民におふれを出す。

『おいしい冷たいデザートを作った者にほうびをだす』

その国の人たちはどんなデザートを作るのでしょうか。


霜月透子様のひだまり童話館『ふにゃふにゃな話』参加作品です。

別の小説『胡桃ちゃんの人形劇』等の登場人物がでますが、旧作を知らなくてもお楽しみいただけます。

むかしむかし……

アツガリーナという国で、王様がおふれをだしました。


"つめたいデザートをつくってほしい。いちばんおいしいのをつくった人に、ほうびをだす"


その国は冬でもあたたかいです。でも、夏はとっても暑いのです。

山に囲まれた国で、近くに海もありません。

毎年夏になると、王様もつめたいものが食べたくなるのです。



アツガリーナの人たちは、それぞれくふうして、おいしいデザートを作りました。


おしろには、いろいろなデザートがあつまりました。

ある人は、しんせんなくだものを水でひやして持ってきました。

またある人は、木の)にミントのにおいをつけたものを作りました。

別の人は、チーズケーキを焼き上げて、それを王様にさし出しました。

だけど、王様はそれでも満足しませんでした。


「新しい食べものがいい。今までに食べたことのないものが欲しいのだ」と王様はけらいに言いました。


ある日の朝、小さな女の子がお城にツボをかかえてやってきました。

そのツボはふしぎなことに、冷たさが伝わるほどひんやりしていました。


挿絵(By みてみん)


国王は、なんだか楽しみな顔でツボのフタを開けました。

中には美しいゼリーが入ってたのです。

あまいフルーツの、いいにおいがします。


スプーンをつかって、ゼリーをすくいあげました。

ゼリーがスプーンの上でぷるるんとふるえました。


王様は一口、ゼリーを食べました。

そのとたん、王様の目がかがやき、にっこりとしました。

ゼリーはひんやりとしていて、とてもあまくておいしかったのです。

口の中でゼリーはふにゃふにゃととけて、さわやかなあじが広がります。

これまで食べたことのない、すてきなデザートでした。


王様はとてもよろこんで、女の子にごほうびを授けました。

女の子はえがおで王様に礼を言って、そのごほうびをうけとりました。


こうして、小さな女の子の冷たくておいしいゼリーはアツガリーナの国で評判となりました。

女の子はゼリーの作り方をみんなに教えたので、作る人が増えました。

そしてアツガリーナの人たちはさらに工夫して、見た目にもきれいなカラフルなデザートのアイデアを作っていきました。

みんなでお互いに競い合って、国の中で美味しい冷たいデザートを作り続けるのでした。


アツガリーナ(ふう)のゼリーは他の国にも伝わり、少女の名前をつけたゼリーが世界中に広がっていったのです。


 * * *


「へぇ……。フルーツゼリー、おいしそうだね」


 従妹(いとこ)胡桃(くるみ)ちゃんが言った。


偉文(たけふみ)くん。海がない暑い国なんだよね。寒天(かんてん)もゼラチンもないと思うんだよ。よく作れたね」


 そういったのは胡桃ちゃんの妹の(こよみ)ちゃんだ。


 安アパートで独り暮らしをしている(ぼく)の部屋に、小学生の従姉妹が二人で遊びに来ている。

彼女たちは僕が書いた絵本の案を見ている。


「暦ちゃんは知っているみたいだけど、寒天もゼラチンも寒いところでできるんだ。だからこの国の人は食べたことがなかったんだ。寒天の材料は天草(てんぐさ)っていう海草(かいそう)だ。これを()て成分を取り出し、冷やして固めるんだ」


「ねぇねぇ、お店で売ってる寒天の材料って、スポンジみたいにフカフカだよね。粉のもあるけど」


 胡桃ちゃんが首をかしげた。


「あれは固まった寒天をこおらせて干して、水分をぬいたものだよ。これも暑い国で作るのは難しいね」


「なら、ふつうのゼリーの材料はゼラチンっていうんだっけ。どうやって作るの。これも海草?」


「ゼラチンは、牛やブタの骨とか皮をゆでて、コラーゲンというものを取り出したものだよ」


 そこで暦ちゃんが「ちょっと待って」って言った。


「偉文くん。ゼリーを固めるには冷蔵庫がいると思うんだよ。どうやって冷やしたの?」


「ははは……。さすが暦ちゃん。それに気づいたか。じゃあ、実際に冷やす方法を試してみようか」


 ぼくは部屋のすみに置いておいた洗面器を持ってきた。

水を2センチくらいの深さまで入れており、ジュースのペットボトルに布を巻いたものを置いている。

ペットボトルの下の部分だけ水につかっている。


「胡桃ちゃん、暦ちゃん。このペットボトルは冷蔵庫には入れずに、この部屋においていたものだ。中はどうなっているかな」


 ぼくはコップを二つ持ってきて、ペットボトルの中身を入れた。

従姉妹二人の前にコップをおいて、飲むようにすすめた。


「わ……。つめたい。本当に冷えてるね」


「あたし、わかったんだよ。気化熱で冷やしたんだよ」


「暦ちゃん、正解。ペットボトルに巻いた布が水を吸って、それが蒸発するときに中が冷えるんだ。あのお話の女の子は、お城にもっていくときに、水でぬらした布をツボにまいて、日に当たらないようにしてたんだ」


 ジュースを飲み終えた暦ちゃんがぼくの方を向いた。


「冷やせば固まるとして、お話の女の子は作り方をどこで知ったんだろう?」


「女の子の親戚(しんせき)がいろいろな国を旅してて、寒い国にも行ったことがあるという設定だ。ゼリーも寒天も知ってたんだ。材料の問題で今回はゼリーになったってこと」


 僕が言うと、暦ちゃんは「そう言えば……」と何かを思い出したように言った。


「同じクラスのタケルくんって子が、夏休みの工作で布のペットボトルカバーを作ったんだよ。『いつも冷たいカバー』って題名がついてて、くわしい説明が書かれてなかったんだよ。たぶん濡らして使うつもりなんだよ」


 胡桃ちゃんと暦ちゃんは放課後クラブで人形劇をよくやっている。

たしかタケルくんも一緒にやってて、紙人形を作るのがうまい子だったかな。



「ねぇねぇ、偉文くん。まえにテレビでどこかの国の様子がでてたんだけど、家の外に水がめをつるしてたの。そうすれば水が冷たくなるって言ってた」


「ああ、そういうところもあるよ。胡桃ちゃん。素焼(すや)き……つまり、塗料(とりょう)をつけずに焼いた陶器(とうき)の入れ物に水をいれて、日陰(ひかげ)の風通りのいいところにおいて置くんだ」


 ぼくが話すと、暦ちゃんがうんうんとうなずいた。


「あたし知ってるんだよ。染み出た水が蒸発して、気化熱で冷たくなるんだよ」


「そういうこと。さすがに冷蔵庫ほどは冷えないけど、つめたく感じるはずだよ」


 ぼくはそう言って立ち上がった。

この子たちにおやつをあげる約束をしていたんだ。


 冷蔵庫からガラスの小鉢(こばち)をだし、スプーンといっしょに従姉妹たちに渡す。

器にはシロップに浸かったゼリーが入っている。

サイコロのかたちのカラフルなゼリーだ。



挿絵(By みてみん)



「わぁ、おいしそう。いただきまーす」


「ありがたく、いただくんだよ」


「ふたりとも、ちょっと待って。その中にふつうのゼリーの他に寒天とかも入っているんだ。どの色が何かわかるかな?」


 ぼくが言うと、ふたりはゆっくりと食べ始めた。


「ねぇねぇ、むらさき色のいちばん歯ごたえがあるのが寒天かな……」


「お姉ちゃん。むらさきのは固すぎるんだよ。たぶん、こんにゃくゼリーなんだよ。赤くて、かんだらくずれるのが寒天なんだよ」


「さすがだね暦ちゃん、正解」


 こんにゃくゼリーは説明しなかったけど、すぐバレたな。

市販のものをサイコロ型にきったものだ。


「ねぇねぇ。この白いのってゼリーじゃなくてナタデココだよね」


「そうだよ。胡桃ちゃん正解」


 ナタ・デ・ココも市販のを入れている。


「あれ? ねぇねぇ、偉文くん。みどりのやつとオレンジのやつ、固さがちがうよね」


「みどりのは口の中で、ふにゃふにゃっととけるんだよ。たぶんこっちがゼリー……」


「じゃあ、オレンジのは何だろう? なんか色はついてるのに()き通っている」


 ぼくは材料のふくろを取り出して二人にみせた。

『ゼリーのもと (アガー)』ってかかれている。


「「アガー?」」


 これはふたりとも知らないみたいだ。


「アガーは、海草やマメの仲間から取り出したものが材料だ。ゼラチンや寒天よりも、透明感(とうめいかん)のあるゼリーが作れるんだ」


「そんなのがあったんだ。ねぇねぇ、偉文くん。こんにゃくゼリーとかナタデココって何でできてるの?」


「こんにゃくは、こんにゃくイモっていうおイモの仲間でできている。ナタ・デ・ココはココナッツの汁を発酵させて固めたものだ。ゼラチン以外のは口の中でとけないから、よく()んで食べようね。ノドにつっかえると危ないから」


 そのとき、ゼリーを食べてた暦ちゃんがこっちを見て、にこっと笑う。

この顔は、何かまた変なことを考えているのかな。


「ゼリーとかけまして、おこっている人とときます」


 またいきなりなぞかけ?


「そのこころは?」


「どちらもぷりぷりしてるんだよ」


 暦ちゃん、ゼリーを『ぷりぷり』っていうのは強引な気がするよ……


『ひだまり童話館』参加の他作品や、アホリアSSの他作品へのリンクはこの下の方にあります。


挿絵(By みてみん)

暦ちゃんの豆知識♪

「ゼリーを固めるには20度以下に冷やす必要があるんだよ。溶ける温度も調べてみたんだよ。固まったゼリーは、ゼラチンだと25度よりもあたたかくなると溶けちゃうよ。アガーは60度以上、寒天は70度以上でとけるよ。こんにゃくゼリーとナタデココは熱湯でも溶けないんだよ」

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[良い点] 拝読しました。 今回も、ためになるお話でしたね。 冷蔵庫のない時代に、どうやってモノを冷やすか、昔の人はいろいろ知恵を絞ってやったのでしょうね……。 王様にご褒美をもらった女の子の名前…
[良い点] 前半のおとぎ話パートにほっこりしながら読み進めつつ、あれ? これだと暦ちゃんと胡桃ちゃんはどうからむんだろう? とおもったら、まさかの後半が本番パターン!! ぷるぷる、ふんにゃりしたデザー…
[良い点] ゼリーの作り方や気化熱での冷やし方、材料などさまざまな知識がいっぱいで勉強になりました。 イラスト、壺を持つ女の子が影絵なのに対して、ゼリーがとてもカラフルで新鮮に感じました。
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