茨城県編♡
「おめのこと、好きになっちったぺよ」
突如、大学のサークルの先輩からそう告白された。
ぽろり。
私は、食べていたアイスを落としていた。
そうか、忘れいた。
今日は、今日は。
私はぎくしゃくと首を回してカレンダーを見る。
サークルの部屋のカレンダーの今日の日付には思いっきりハートで「14」の数字が囲まれている。
ああ、やっぱり……!
恐怖のバレンタインだ。
私はバレンタインが嫌いだった。
昔から、良い思い出が一つとしてない。
高校一年生の時は、罰ゲームで嘘の告白をしてきた男子が居た。
高校二年生では、知らない他校の男子に校門で公開告白された。
高校最後の年のバレンタインには、男子が同時に二人も告白してきて決闘騒ぎになった。
昨年の大学一年生は。
「付き合ってくれなきゃ僕は生きてけない!」
と重い愛を伝えられた。
ほら、良い思い出が無いでしょ?
だから。逃げたくなった。
先輩だって、きっと本気じゃあないに決まっている。
「本気だ」
「ひっ!」
私は顔が近付く先輩を押しのけて、サークルの部屋を飛び出す。
「待てよ!」
講義室の前で追いつかれ手を摑まえられる。
ブルブル震える私を見て、先輩は目を見張った。
「……有菜が、バレンタインの日に良い思い出が無いという噂は聞いている。だから俺は、おめのこと幸せにしてやりたい、守ってやりたいんだ!」
先輩の目に光る涙を見て、思った。
この男の人は、信じていいのかも。
私も、気付いていたら泣いていた。
「ハッピーバレンタイン」
どこからか、そんな声が聞こえた気がした。
♡「好きになっちったぺよ」とは「好きになっちゃった」という意味。
語尾に「~ぺよ」と付くのも特徴の一つ。