岩手県編♡
その日、私は緊張して寝られなかった。
前の晩に、ある物を遅くまで作っていたのもあるけれど。
今日は、堂々と愛を告白できる日・バレンタインデーだ!
だから私は大好きなあの人に、チョコレートと気持ちを受け取ってほしかった。
憧れの、岩手県限定でしか活躍していない地元アイドル・がんちゃんに。
このご時世、なかなかがんちゃんのコンサートには行けなかった。
もう中止のお知らせがある度に、私は涙を流した。
でも。今日どうしてもバレンタインイベントには行く。絶対に行くんだもん!
しかし……。
「う、噓でしょー⁉」
朝、一番に起きてスマホを見た私は叫んだ。
県公認のアイドルなので岩手県のホームページにはがんちゃんの特設ページまである。
そのページに赤文字で「イベント中止のお知らせ」と書かれている。
私はがっくしと崩れ落ちた。
涙が一筋、頬を伝った。
相手が地元アイドルとはいえ、私にとってがんちゃんは真剣だった。
「好きだっちゃ~がんちゃん~」
泣きながらそう言った時だった。
ピロリロリン♪
スマホが鳴る。
こんな時に、何だろう。
『From がんちゃん』というメール。
「え、嘘!」
「ハッピーバレンタイン」
どこからかそんな声が聞こえた気がした。