群馬県編♡
僕は、恋愛に興味が全くと言っていいほど無かった。
それを同い年の奴らはいたく心配してくれていた。
学生の本分は勉強だろ?
と言ったら、かなりひかれてしまった。
そんな僕にだって誰かに対しての「好き」という感情くらいはある。
その対象がたまたま馬だっただけだ。
僕は乗馬を習っていた。
愛馬のみゆきは、綺麗な瞳をした自慢の馬だ。
まあ、某アイドルから名前をいただいたのは、秘密だが。
馬の背に乗ると、一気に視界が高くなり爽快だ。
僕は、高校にしては珍しくある馬術部所属だ。
もちろん、夢はオリンピック出場だ。
「みゆき、今日も綺麗な瞳だな」
ブラッシングをみゆきにしてやりながら僕は愛馬に語りかける。
「山鳥、ちょっと」
顧問の先生がやって来て急に僕を乗馬場の隅へと連れて行く。
「また、頼む!」
「ええ、またですかあ」
僕は呻いた。
顧問の先生は、教師の仕事の方が忙しくて僕に部室の鍵閉めをよく頼む。
渋々頷く僕。
顧問の先生は上機嫌で去って行く。
「まーた頼まれたんだ先輩」
「蓮花」
馬上から、その様子を見ていたらしい後輩の筒地蓮花が呆れたように見下ろしてきた。
僕に対して本当によく揶揄ってくる後輩だ。
「馬にしか興味ない先輩~」
と散々この間も言われた。
僕はみゆきの背に乗ると、蓮花の愛馬のバードンと並んで軽くギャロップで走る。
「好きなんさ」
蓮花の突然の発言にみゆきから落ちそうになる。
「な、何を突然」
「先輩、馬がですよ。私は馬が好きですよ、先輩と同じく」
「あ、ああそうか」
僕は安心してみゆきをバードンより先に走らせる。
「……バレンタインデーって気付いてるのかな先輩」
蓮花の呟きは、二月の冷たい空気に溶けていった。
「ハッピーバレンタイン」
どこからか、そんな声が聞こえた気がした。
♡だんだん、標準語に近づいて来る告白。