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(8)でっかいどー?

本日3話目(3/5)

 周辺の地図を作成して二つのスキルを新たに覚えている間、残念ながらLVの表示はされなかった。

 領域の中に魔物が入ってくることもあったし、その結果いくらかの経験値も得ていたがそれだけだ。

 クインがねだってきた(?)魔石もそれらの魔物から得たものになる。

 LV表記されていないのはそういう仕様なのか、あるいは何かが足りないからなのかは今のところわからない。

 普通のゲーム感覚でいえば、レベル上げ開始から半月もかけて表示されなければクレームの嵐になりかねないが、今の立場が普通のゲームと同じだと考えること自体間違っていると考えている。

 少なくともLV表示のあるなしは、この世界ではあまり重要なことではないのだろうと推測している。

 経験値らしきものはあるのにLV表記がないのはこれいかに――と思わなくもないが、そこは突っ込んでも仕方ないだろう。

 そもそも以前の人生では能力が数値化されるなんてことはなかったのだから、そういう意味では当然ともいえる。

 

 推論と希望的観測だらけでいざというときに大丈夫なのかという心配はあるが、少なくとも眷属たちは積極的に狩りに行かせている。

 これは俺自身が命じたというのもあるが、基本的には眷属たちから言い出したことだ。

 回収している魔石は今のところクインの眷属を作るためにしか役立っていない。

 だが、今後もそれだけだとも考えていない。

 理由は単純なことで、まずシルクが同じように興味を示していることだ。

 アラクネであるシルクもクインと似たようなことができる可能性があるらしく、今はそちらの方面で時間を多めに使っているくらいだ。

 俺から見れば間接的であれ、眷属の数が増えればそれだけ領域内の防御力も上がるので、両名には期待したいところである。

 

 さらに眷属たちの中でもう一つ変わった動きがあるのは、木人であるアイが簡単な道具を作り始めたことだ。

 当人曰く、最初に興味を示したのはシルクが作った蜘蛛糸製の地図を見たときだそうで、そちら方面で役に立てるのではないかと考えたそうだ。

 見た目通り木の枝でできているアイは、他の眷属たちと比べても戦闘面に関してはすぐれているとはいいがたい。

 元の材料が世界樹であるために見た目以上の固さを誇っているのでそうそう簡単にやられたりはしないが、攻撃面でいえば一段どころか二段三段劣るだろう。

 まずは自分自身が使う武器を作ることから始めると言っていた。

 その成果は今のところ上がっている様子はないが、端で見ている限りは着々と進歩しているようなので、今は黙って見守ることにしている。

 

 ある意味で生産面といえる方向で力を使い始めた三人の眷属に対して、他の三人は戦闘面での活躍を見せている。

 具体的にいえば、領域内に入ってくる侵入者は勿論のこと領域外の魔物も積極的に狩り始めていた。

 その成果は着実に上がっていて、それは持って帰ってくる魔石の数が証明している。

 付け加えるとログとして出てくる経験値にも影響が出ていて、少しずつとはいえ日々数値が上がっているのが現状である。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 そんな感じで眷属たちが頑張っている中、肝心の俺自身が何をやっているかといえば、この日は世界樹の枝の一本に腰かけながらラックと一緒に星空を眺めていた。

 前世で見られなかったほどの満天の星が見ることができて綺麗だからという理由の他に、別のある意味では大きな問題があるためわざわざこうして時間を使って星を見ているのだ。

「――――やっぱり、どう考えても、見覚えのある配置なんだよなあ……」

「ピイ?」

「問題があるのかって? いや、問題があるといえば問題があるし、無いといえばないかな?」

「ピイ?」

「いや、ごめん。確かに言っている意味がよく分からないよね。でも、まあ、俺自身も考えがまとまるまでちょっと混乱しそう」

「ピー」

「ハハハ。慰めてくれてありがとう。でも、しばらくは黙って考えるね」

「ピ」

 ラックからの了承を貰えた俺は、改めて空に浮かぶ星々を眺め始めた。

 もっと正確に言えば、記憶にある星の配置と違っている点がないかを探し始めたのだ。

 

 田舎育ちである俺は、幼少期は星空を眺めて過ごすことが多かった。

 そのため一般的な常識(?)よりも、少しばかり多めの知識が頭の中に入っている。

 とはいえ専門家というわけではないので、どの星や星座がどの位置にあればどの季節になっている程度くらいしかわからない。

 季節は勿論のこと緯度や経度が変われば見え方も違ってくるはずなので、正確な星の周期と見比べるなんてことは無理だ。

 

 ただそうした細かい条件を除外したとしても、今現在空に浮かんでいる星々は見覚えのあるものが多すぎた。

「北極星は勿論のこと北斗七星なんかも普通にあるし。あれなんかはカシオペア座……。どう考えても地球から見えていた星と変わらないんだよなあ」

 この転生先=地球説を裏付ける証拠は、何も星や月などの天体だけではない。

 眷属たちによって日々アップデートされている地図――というよりは、世界樹から見ることができる景色も見おぼえがあるものだったのだ。

 当初は「そんなわけがないだろう」という考えのもとずっと考えないようにしていたのだが、こうして事実を突きつけられればその考えが再び浮かび上がってきた。


「昼間に見えている山も、どう考えても大雪山系のものにしか見えないし……」

 大雪山系というのは、わが故郷である北の大地にある代表的な山々のことだ。

 一足飛びに今いる場所が北海道だと決めつけるのは危険だということはわかっているが、これだけの証拠が揃ってしまうと否定するのも難しい。

 できることならもっと決定的な証拠――例えば海岸線などが分かれば、確信できるはずだ。

 だからといって眷属たちの探索を焦らせるつもりは毛頭ないのだが。

 

 そうしてひとしきり考えてから出した結論は、たとえ今いる場所が予想通りに北海道だったとしてもやることは変わらない、というものだった。

 そもそも人としての枠から大きく外れてしまっている以上は、人であることの倫理観にこだわるつもりはない。

 加えて言えば、今見えている山々が本当に大雪山系だとすると現在の探索で小さな村なんかが見つかっていてもおかしくはないのだ。

 いくら北海道が「でっかいどー」だからといっても、梟の目で見つけられないほど人の痕跡が見当たらないはずがない……と思う。

 もっとも人里のあるなしに関しては、若干自信がないのだが。

 

 そもそも魔物が出てくることは確定しているので、俺が知っている北海道とまったく一緒であるわけはないのだが、領域の防衛という点でいえば一応考えておく必要がある。

 もっとも現代兵器がある町や村が見つかったとして、わざわざこんな山奥まで攻略に来るもの好きがいるとは思えない。

 ……いや、もしかしたら俺のような存在を含めてヒャッハーしてくる者はいるかもしれないが、組織的に行動してくることはないはずだ。

 あるとしてもまずは話し合いから行われるはずだ。

 ――そう考えるのは、現代日本人としての感覚が残っているが故の「甘さ」なのかもしれないが。

 

 いずれにしても当面の行動方針が変わることはない。

 少なくともレベルが上がるなりして領域が拡大されたときには考えが変わることもあるかもしれないが、今は変える必要はないだろうと結論付けるのであった。

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