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(7)ラックからの報告

本日1話目(1/2)

 北部の領土化が終わって個人の強化からそれぞれの強化まで色々と進めている間も、領域の拡張は順調に進んでいた。

 方角的には人里を避ける目的で、まずはでっかいどーの東側から攻略している。

 道東の南側はまだ分からないが、北側に関しては恐らく人がいないであろうことはラックからの報告で分かっている。

 領域が増えればその分得られる魔力も多くなり、自力で作ることができる魔石の量も増やすことができる。

 そのためにも、領域の拡張は常に優先順位が高くなっている。

 攻略の進め方としては、まずラックが空から簡易的な情況を確認して、ファイやルフ&ミアコンビで魔物の討伐などを行っていく。

 未攻略の領域は当然のようにエリアボスが存在しているので、周辺の魔物を討伐した後は倒せる戦力で向かって倒すというのが一連の流れだ。

 エリアボスを倒す際には相手の強さの見極めが重要になるのだが、今のところラックの所見が外れたことはない。

 結果として大きな損害を負うことなく、道東の北部に関しては順調に攻略を進めることができていた。

 いわゆるオホーツク海に面している海岸線を順調に攻略していき、あと一つのエリアボスを倒せば東端エリアに当たる場所を攻略できるところまで来ていた。

 

 道東北部の攻略が順調に進む中、先行して南部を調査していたラックがとある報告をしてきた。

「――人里があった?」

「ピッピ(正確には、朽ち果てた人里のなれの果てがありました)」

「朽ち果てた……ということは、以前は住んでいたけれど何かの理由で住めなくなったとかかな?」

「ピ(恐らく)」

「人はいないんだよね?」

「ピピッピ(数日見回ってみましたが特に気配は感じませんでした)」

「うーん……微妙なところかな。仕方ない。未知な状態なのは危険だけれど、シルクとクインの子眷属に様子を見てきてもらうか」

「ピイ(それがよろしいかと)」

 

 新しく作った女王を中心とした部隊はまだできていないが、以前ダークエルフの里を監視するために作った偵察用の子眷属はしっかりと働いている。

 彼らを使って朽ちた人里とやらを見張って貰えれば、大体の状況はわかるだろう。

 ラックの話を聞く限りではほぼ全滅している可能性の方が高いと思うが、油断することはできない。

 南部の攻略を進めていけばいずれは攻略対象領域になるので、出来る限りの情報は得ておきたい。

 とはいえ、ダークエルフの時と違って数か月単位で時間をかけるつもりはない。

 一週間ほど様子を見てもらって人が戻ってくるような気配がなければ、攻略対象にしてしまっていいだろう。

 ラックから聞いた位置から考えれば、東端から攻略を進めていけばそれくらいの時間は余裕でかかるはずだ。

 

 そこまで決めたところでラックの話は終わり――と思いきや、さらに別件があったらしく続けてこう報告をしてきた。

「ピピーッピピ(それから以前より話をしておりました制空権についてですが、もしかすると目途が立つかもしれません)」

「うん? お嫁さんでも見つけてきた?」

「ピピ(違います)」

「早いなあ。そんな即答しなくてもいいのに。まあ、冗談はともかくとしてどんな目途?」

「ピピ。ピッピピ(準眷属です。群れてはいないですが、恐らく準眷属になりそうな空の魔物を見つけました)」

「……おや? それって本当に大丈夫なの? 今の今まで見つかっていなかったのは怪しいと思うけれど?」

 そう突っ込んでみたが、ラックから帰ってきた答えは実に簡単なものだった。

 

 ラックに問いかけたように、彼自身も同じように接触してきた当初は疑問を抱いたらしい。

 ただ彼ら(・・)の有する魔力が確かに世界樹のものを内包しているということと、様子を見ていたのはお互い様だと言われて報告することにしたらしい。

 要するにラックは、以前から彼ら――空飛ぶ魔物たちの存在は知っていたが、敢えて接触せずに放置していたらしい。

 道北地域を領土化した現在、昔ほど積極的に魔物を狩っていないこともあり無害そうな魔物は放っておくことも珍しくなくなっている。

 今のところ確認はされていないが、人がこの島に上陸してきた時に自然の防壁としてなしてくれることも期待していたりもする。

 

 そうした放置している魔物の中に、準眷属候補・・となりえる魔物がいたとしても不思議はない。

 現にゴブリンを準眷属と認めた後も、似たような存在はいくつも見つかっている。

 今のところはゴブリン以外を準眷属とする予定はないのだが、今後のことを考えれば種類を増やすことはやぶさかではない。

 というよりも、間違いなく増やすことになるだろう。準眷属としたゴブリンたちの様子を見ていて変なことにならなければ。

 

「話は分かった。けれど、今この段階で話をしてきたということは、彼らを準眷属として迎えたいということでいいかな?」

「ピ(その通りです)」

「ゴブリンたちの様子を見る限りでは問題ないとは思うけれど……一応理由を聞いても?」

「ピピピ(流石にこの広大な大地を私一人で見るのは、いずれ限界が来るかと思います)」

「それはそうだよねえ。だから空を飛べる仲間を増やしたかったんだけれど……まあ、いいか。空からの監視に関しては急いだほうが良いというのも理解できるから、今回はラックの目を信じることにするよ」

「ピピ(ありがとうございます)」

「それで? いつ会いに行けばいい?」

「ピ(それは私の方で準備をしておきます)」

「そう? それじゃあ任せた」


 そう締めくくってその場での話は終わった。

 あとはラックが場を整えてくれるのを待つばかりという状態になったのだが、その時は思っていたよりも早く訪れた。

 話を終えた二日後には準備を終えたという報告をラックから受けたのだ。

 それほど短期間で準備を進めたのは、よほど急を要していたと判断すればいいのか、空を飛べるものの優位性だと考えればいいのか微妙なところだ。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 ラックが整えてくれた場は、世界樹本体からほど近い場所にある平地の一角だった。

 ただし近いといっても空を飛べる者たちからすれば、という注釈がつくのだが。

 今回集まった者たちは、ラックのように梟から鷹や鷲まで揃っている。

 流石に飛竜のような亜龍に属するような魔物はいなかったが、それでも二十体近い鳥型の魔物が集まっているのを見ると壮観だと思える。

 

 その鳥たちが、転移で現れた俺に向かってそれぞれが頭を下げていた。

 これだけで彼らが準眷属になりうる存在だということにはならないのだが、それでも多少なりとも好意的な印象を抱いた。

 事前にラックがそうするように言ってあったのかもしれないが、それは大した問題ではない。

 眷属と違って彼らの言葉を理解することはできなかったので心のうちまではわからないので、準眷属と認めるかどうかを判断する材料はラックを信じることしかない。

 

 ちなみにラックの話によると、この場に集まっている彼らは準眷属になることを希望しているすべての鳥種ではないらしい。

 今この場にいるのは、ある程度の範囲の領域内で鳥種を統べている存在になるらしい。

 それ故に、彼らを準眷属と認めれば、恐らく他の鳥種も芋づる式に準眷属だと認められるはずだということだ。

 数だけでいえばさすがにゴブリンを超えることは無いだろうが、個々の能力を考えれば集まればかなりの勢力ということになる。

 

 そんな話をラックとしている間も、集まった鳥たちはほとんど動くことなく鳴き声を発することはなかった。

 それが鳥種としての性質なのかはわからないが、見ようによっては異様な光景に見えてもおかしくはない。

 だがそれらを目の前にしている俺は不思議とそんな感じを受けることは無く、むしろ穏やかな雰囲気すら感じていた。

 どこかで似たような空気を感じ取ったような気がして記憶を探ってみたが、すぐにそれがゴブリンの里にいるゴブリンナイトから感じるものだと思い出した。

 もしかするとこの感覚が準眷属となりうる魔物であることの証明なのではと思ったが、当然ながら誰からも答えを得ることはできなかった。

 

 とにもかくにも、彼らをこのままにしておくわけにも行かず、かといってすぐに答えを出すこともできなかったため、当面はその働きを見ることで準眷属に加えるかを決めると伝えてその場は解散したのであった。

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