(5)新たな因子の利用法
本日1話目(1/2)
クインたちとの話し合いで決まったのは、情報収集や工作に特化した部隊を作るということだ。
そのために、まずは俺が作る魔石を用意してほしいといわれた。
クインやシルクが敢えてそう言ってくるということは、今できる最高の物を用意したほうが良いだろう。
そもそも孫眷属を作り出すための子眷属を作るというのだから、そのために必要になる材料(栄養)も高くなるのは当然だ。
というわけでさっそく魔石を作ろうと思って一度本体に戻ったのだが、ふと思いついたことがあった。
魔石生成というのは、領域内にある魔力を少量ずつ集めて世界樹の体内で固体化するという作業を自然に行っていること考えている。
それであれば、魔石生成を使う時に『極寒の因子』を混ぜ込むとどうなるのだろうかと。
極寒の因子を何かに混ぜ込むというのは、種を作る時にやっている作業だったので思いついたことだ。
思い立ったが吉日ということで、まずはやってみることにした。
もし失敗した場合はクインやシルクに渡すのが遅くなる可能性もあるのだが、一日や二日程度遅れたくらいで怒られたり不満に思ったりはしないだろう。
そもそも新しい部隊を作るのも先々のことを見据えてのことなので、今すぐに用意してほしいとお願いしたわけではない。
であれば、今はこちらの実験を優先するべきだろうと考えた。
魔石生成を使って魔石を作ることは既に慣れているので、その作業に極寒の因子が混ざるように意識をして作ってみた。
するとその結果はすぐに表れて、見事に考えていた通りの魔石が手元(体内)に残ることとなった。
その魔石を持って分体生成をして表に出てみると、しっかりと手の中に作った魔石を持っている。
普通の魔石というのは色が定まっていないのだが、これは魔物の体内で生成される時に、それぞれの魔物の属性なりの影響を受けているからではないかと言われている。
そして普段俺自身が作る魔石は緑色なのだが、今回は緑を基調として白の線が波紋のように波打っている魔石が出来上がっていた。
さらに付け加えると、何となくだが魔石自体から何となく冷気のようなものを感じ取ることができる。
実際に触れてみて冷たいと感じるわけではないのだが、例えると人の視線から冷たさを感じるとかそんな感じだ。
もしかすると魔石の中で波打っている白い線が、冷気のようなものをイメージして冷たく感じ取っているのかもしれない。
どう考えても魔石生成に極寒の因子を混ぜ込むという実験は成功したといえるだろう。
その結果を持って、さっそくシルクとクインのところへ――と思ったのだが、生憎二人ともホーム周辺にはいなかった。
彼女たちは未だに領域内を飛び回ることもあるので、揃っていなくなることは別に珍しいことではない。
なので二人が帰ってくるまで待とうと思っていたのだが、ここでアイが少し不思議そうに首を傾げてこちらを見てきた。
「ご主人様、それはなに?」
「ああ、これか。シルクとクインから魔石を頼まれて作ったんだが、ちょっとおまけで実験してみたら上手くできたんだ」
「……貸してもらってもいいですか?」
「勿論、構わないよ。ほら」
持っていた魔石をアイに渡すと、発する「冷気」にびっくりしたのか、一瞬だけびくりとしていた。
それが面白くてちょっとだけ笑ってしまったのだが、アイはそのことには気付かずただただ渡された魔石を注視している。
アイがここまで集中するのはなかなか珍しいので、渡した魔石がそれほどのものなのかと納得した。
とはいえ、それがどれほどの価値があるのかは口に出して言ってもらわないと具体的にはわからない。
そろそろいいだろうと思われる時間まで待って、アイに声をかけることにした。
「――どんな感じかな?」
「これは、凄いです。……いえ。いっそのこと私が何かを言うよりも、ダークエルフの人たちに見てもらったほうがいいかもしれません」
「ダークエルフに?」
「私たちでは、あくまでも魔物としての価値観でしか図れませんから」
「うーんと。とりあえず人の間の価値観は置いておくとして、魔物にとってはどう使える?」
「それは簡単です。進化のための魔石として有用になります」
「なるほどね。それは予想通りかな。シルクとクインの子眷属用としては?」
「進化に使えるくらいですから恐らく大丈夫でしょう。具体的には本人たちに聞いてもらったほうがいい」
「それはそうか。――それじゃあ、ダークエルフに見てもらうかどうかだけれど……どうしたものか」
「何か問題が?」
「いや~。アイの反応を見る限り、その魔石を『作れる』と分かった時点でとんでもないことになりそうな気がする」
「作れることを隠しては?」
「意味ないだろうねえ。話が拡散した時点で、どこかで誰かが推測すると思うよ」
「そう……ですか。それでしたら特に見せる必要はないかと思います。私たちにとっては進化に有益だと分かればいい……ですよね?」
「そういうことだね」
きちんと意図を理解してくれたアイに、俺は大真面目に頷き返した。
先々のことを考えれば、人の勢力を跳ね返せるくらいの力を持てたと確信出来るまではこの魔石のことは話さない方がいいだろう。
もし大きな力を持った場合は、逆に取引材料として使っていくのもいいかも知れない。
その際に俺自身が作れることまで公言するかどうかは、その時の状況によって変わってくる。
いずれにしても、今ここでは人にとっても有益な資源となりえると分かっただけで充分である。
あとはシルクとクインからどんな答えが得られるかだが、それは当人たちが帰ってくるまで答えはお預けになった。
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結論からいえば、もともとの目的であった孫眷属を生み出しうる子眷属を作るための魔石としては十分すぎるという答えが得られた。
そもそも今作れる魔石自体も質がどんどん上がっているらしく、通常の魔石の状態でも十分だったらしい。
その上で極寒の因子が加わった魔石になると、別の性質も加わることになるとのことだ。
「――別の性質というのは?」
「簡単にいえば、氷とか寒さに対する耐性がつくとかそういった感じの性質が加わるはずですわ」
「なるほどね。まあ、大体予想していたのと同じかな? 種を作った時と同じような感じだよね」
「その通りですわ。付け加えますと、わたくしたちが使って進化した場合も同じになるはずです」
「ああ、そういえば進化にも使えるとか言っていたっけ」
「はい。ただ以前の話でいえば、恐らくですけれど横の進化になるはずですわ」
「そういうことか。種族は大きく変わらずに、氷の性質がつくとかそういった感じ?」
「その通りです」
シルクと話をしたおかげで、新しく作った魔石の利用法が見えてきた。
眷属たちに氷(極寒?)の属性がつくのであれば、率先して使ってもらうのもいいかも知れない。
勿論、当人たちが望むのであればだが。
そんなことをシルクに告げると、凄い勢いで「絶対望みますわ!」と食いついてきた。
特にシルクやクインの場合は、自分自身が持っている性質を子眷属に引き継がせることができるようで、持っている属性は多くなれば多くなるほどいいらしい。
そう考えると他の因子も手に入れる機会があれば、手に入れるようにしていきたい。
今わかっていることで次の入手の機会があるとすれば、またどこかの領域を領土化することだろうが、実際に領土化をしたら必ず因子が手に入るかはわからない。
そう考えると、今後の目標として新たな因子を手に入れるという項目が加わったということになるのだろう。




