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(5)初の侵入者

本日5話目(5/5)

 領域を認識できたことでわかったことが一つ。

 それまで眷属たちが言っていた「魔力が濃い場所」というのは、領域そのもののことを指していたということだ。

 ステータスを確認してからすぐに新たな領域を確認しようとしたのだが、先に拡張された領域に移動したファイがそのことに気が付いたのだ。

 念のためその先にも進んでもらったのだが、明らかに世界樹の魔力的な範囲が広がっていることがわかった。

 さらにそのまま現在の領域の限界まで進むことになったのだが、それが変わることはなかった。

 ついでに拡張された領域の限界に到着した際にも確認を行ったのだが、やはり領域の外は世界樹の魔力の濃度が下がっており、俺自身も領域の外に出ることはできなかった。

 その後アナウンスはなかったことから、もしこれ以上の範囲に出たければ領域を広げる必要があると思われる。

 どうやってその範囲を広げるのかは今のところ不明だが、おそらくLVが関係しているのだろうと予想はしていた。

 

「――というわけだから、俺は領域から先には出ることができなさそうだ」

「つまりは、主様がさらに移動したい場合は、領土を広げる必要があるということですね?」

「領土じゃなくて領域なんだけれど……まあ、そういうことかな」

 シルクの言葉に微妙な違いがあったため一応訂正したが、残念ながらそのニュアンスの違いは通じなかったようだ。

 正直なところアナウンスで領域と言われたからそう言っているが、俺自身にも領土と領域に明確な違いがあるかはよくわかっていない。

 国を建てたわけじゃないんだから領土じゃなくね? というセルフ突っ込みをしてみたが、それに答える者もいないし。

 

「ということはやはり主様のご威光を示すためには、領土……領域の拡大を目指すべきですわね」

「いやいや、ちょっと待って。ご威光云々はともかくとして、そもそも領域の広げ方もわかっていないからね」

「そうなのですか?」

「そうなのですよ」


 ゲーム的に考えれば領域の(ボス)的な存在を倒せば拡張したりするのだろうけれど、この世界にそんな存在がいるかも分からない。

 そのためにも周辺の確認をしてもらっているのだが、今のところはそのような存在は見つかっていないらしい。

 一応他にも魔物は存在しているらしいけれど、ボス的な存在ではないそうだ。

 

「とりあえず、領域の範囲のことは大体わかったから一旦木のある所に戻って――って、おや?」

「主様? どうされました?」

「うん。何か領域内に入ってきたみたいだね。方角的にはあっちの方向」

「何と!? どうされますか? ご指示をいただければすぐにでも対処いたします」

「う~ん。そうだなあ。とりあえず足……というか、空を飛べるラックが先に行って偵察。さっきも言ったように敵対的だったら倒していいよ。ただ無理は禁物。追加でも送るから絶対に無理はしないように」

 繰り返し念を押すと、ラックはわかったと言わんばかりに一度だけ「ピー」と鳴いて、俺が指した方角へと飛び立っていった。

 

「――さて。それで、残りのメンバーだけれど、上から順に足が速い二人は?」

 そう問いかけると、ルフとファイの二体が前に進み出てきた。

「あれ? ルフはともかくファイも速いのか。それじゃあ、二人で後続組になって追いかけて。何度も言うけれど無理、無茶はダメだからね。――それじゃあ、行って」

「ワフ!」「ガウ」

 俺がそう指示を出すと、それぞれルフ、ファイの順に返事をしてから侵入者の方角へと駆け出していく。

 

 それを見届けてた俺は、のんびりと残りの眷属たちに話しかける。

「それじゃあ、俺たちも行こうか」

「畏まりました」

「わかりましたわ」

「(カクカク)」

 クインとシルクの返事に合わせるように、木人のアイも太めの枝でできている頭を上下させていた。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 後発隊の俺たちは、先発隊に比べると遅めに、けれども森の中を移動するには速いスピードで移動した。

 俺自身はそんなに早く飛べるわけではないので、先ほどの移動のように今度はシルクの肩の上に乗せてもらっている。

 移動の最中は特に大きなイベントもなく、目的地に着くことができた。

「えーと、あそこか。……というか、戦闘中?」

「そのようですね。ただ、戦闘というか……」

「遊んでいるね。あれは」

「……そのようです」

 三人の眷属たちの様子を見た俺の感想に、クインが若干呆れた様子になっている。

 

 三人の眷属が相対しているのは、二体の豚顔をした二足歩行の魔物――いわゆるオークというやつだった。

 その二体のオークを相手に、先発隊の眷属たちはグルグルと周囲を回りながら付かず離れずの攻撃をしている。

 ただ、戦闘ともなれば少しは緊迫感というものが出てもいいのだろうが、残念ながらそんな雰囲気はない。

 戦闘素人の俺自身でさえそう感じているのだから、他の眷属たちはなおさらその雰囲気を感じ取っているはずだ。

 

「これは、俺が出した指示が悪かったのかな? うーん……。とりあえず、いつまでもからかっているのもかわいそうだからさっさと終わらせようか。話し合いなんかは完全に無理みたいだし」

「それがよろしいでしょう。私が指示をしても?」

「うん。お願い」

 戦闘中の相手に下手に声をかけるとどうなるのかわからなかったので、指示出しはクインに丸投げする。

 

 ……と、そんなことを考えてクインに指示を出したのだが、

「さっさと終わらせなさい。主様のご指示です!」

 いきなりそう大声を出した。

 そんなことをしても大丈夫なのかと一瞬不安になって戦闘中の眷属たちを見たが、突然の指示に動揺することもなくすぐに攻撃態勢に移っていた。

 いや。移ったというよりも、戦闘自体が一瞬で終わっていた。

 

 火熊のファイが立ち上がって一体のオークに右手の一撃を加えると、見た目だけではお相撲さんくらいの体重がありそうなオークが吹っ飛んで動かなくなり。

 別のオークには素早い動きで翻弄していたルフが、突如方向転換をして一気にオークの首元を狙ってジャンプをしてそのまま首をはねてしまった。

 一体どんな攻撃をすればそんな非現実的な光景になるのか問い詰めたかったが、後発組の三人はごく当たり前のような顔をして立っている(残念ながらアイの表情はもとからないのだが)。

 聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥というが、この場合は聞いていいのかどうか悩んで、結局選択したのは聞かないということだった。

 侵入者は無事に倒されたという事実さえ認識していればいいと考えたのだ。

 

「主様。侵入者は撃退しましたが、魔石はどうしましょうか?」

「魔石? あるの?」

「ございます」

 ある界隈では定番中の定番である魔石だが、この世界の魔物にもしっかりと適応されているようだった。

 ただし前世の想像の世界では、様々な使われ方をしていたためこちらの世界ではどんな使われ方をするかがわからない。

 

 というわけで、取りあえず取っておくことにした。

「回収だけしておいて。拠点――木の中に戻った時に使えるかもしれないし」

「畏まりました」

「ところで君たちは魔石を食べたりはしないの?」

「魔石をですか? 少なくとも一度も食べたことはないですが……食べたほうがよろしいのでしょうか?」

「いやいや。ただの確認だから無理に食べる必要はないよ」

 困惑した表情で問い返してきたクインに、慌てて首を振るのであった。

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