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(2)魔石生成と眷属の進化

本日2話目(2/2)

 雪解けも順調に進んで春の花が咲き始めた頃、ルフとミアの子供たちを見ながらふと思いついたことがあった。

 何のことかといえば、以前ミアが話していた自然発生する魔石のことだ。

 ミアの場合は自然発生した魔石があればすぐにわかって、その場まで取りに行っていたという話だった。

 だがそれは実際のことは、自然発生したというよりはエリアボスの存在によって作れていたのではないかということだ。

 ということは世界樹の場合は俺自身がエリアボスに当たるはずで、魔石を作れること自体がミアの言っていた自然発生のことではないかと推測したのだ。

 もしそれが当たっているのであれば、領域が広がれば広がるほど魔石を作れる頻度が高くなる……はずではないかと予想を立てた。

 考えてみれば初めて魔石を作った時も、ごく自然に「作れる」という感覚があったからこそ作っていた。

 となればその予想は大きくは外れていないはず。

 

 というわけで、これまで適当に作っていた魔石をきちんとした計画の元作るようにしてみた。

 以前は数日に一個という感じで作れていたのだが、今では大体一日に一個は作れるようになっている。

 これもエリアが広がった影響ではないかという予想がたつのだが、それを立証するためには領域の拡大で時間が短縮されるかを確認しないといけない。

 だからといって眷属たちに無理をされていざという時に何かあると困るので、そこはこれまで通りのペースで進めてもらう。

 あくまでも自然な形で検証するのが一番だろう。

 

 ――なんてことを考えていたのだが、領域が拡大しているということはエリアボスを倒しているということであり、眷属たちもどんどん成長している。

 それに伴って領域の拡大ペースも早くなっているので、魔石の検証については思っていたよりも早く結論に近いものを出すことができた。

 結果からいえば、立てていた予想は当たっていて領域の拡大に伴って魔石の作成スピードも少しずつ上がっていた。

 この結果から大体どのくらいのスピードで魔石が作れるかも予想できるようになり、そのお陰で今後の魔石の振り分け方についても予定が立てやすくなった。

 

「――というわけで、はいこれ」

「ピピ、ピイピピピ?(何が、というわけでなのでしょうか?)」

「ああ、うん。それは無視していいから。とりあえずこの魔石はラックに渡しておくね。好きに使っていいから」

「ピーピ?(それはありがたいのですが、よろしいのですか?)」

「うん。いいのいいの。この後、アイ以外の皆にも渡すつもりだから」

「ピイピイピピ(それは大盤振る舞いですね)」

「そう思うだろう? でも魔石の作れるペースが分かって予定が立てられるようになったから、ある程度好きに使えるようになったんだよね」


 軽い調子で俺がそう言うと、ラックは驚いた様子で身を大きくしていた。

 これまで不定期で渡していた魔石が、予定を立てて作れるようになったことに驚いたのだろう。

 

「ピピ……(魔力を使って何かをやっていらっしゃることは感じていましたが……)」

「あれ? やっぱりわかっていたんだ」

「ピピーピイ(そうでなければ眷属など名乗れません。恐らく皆も気付いていたでしょうから)」

「そっか。まあ、いいや。とりあえず、そういうわけだから気にせず好きに使っちゃって」

「ピ(畏まりました)」


 俺の説明で納得したのか、今度は素直に受け取っていた。

 恐らく進化のために使うのだろうと予想しているのだが、ラックのことだから予想外の使い方をしてくれるかもしれない。

 そんなことを考えていると、探索やら魔物の討伐やらに出かけてきた他の眷属たちが続々と戻ってきた。

 その眷属たちに、それぞれ魔石を渡していく。

 魔石を渡された眷属たちは、それぞれがラックと同じような反応をしていたが最後にはきちんと受け取っていた。

 ちなみに、前回進化で使ったアイや子眷属たちのために使ったシルクやクインにも渡してある。

 

 通常の魔物の討伐で手に入れた魔石についてもそうだが、眷属たちはどう使えばいいのか最善で選択している節がある。

 もしかすると生存本能が働いてそんなことになっているのではないかと予想しているが、実際のところはよくわからない。

 ただ俺自身があれこれ指示をするよりもよさげな結果になっているので、これからもあまり魔石の使い方については指定をするつもりはない。

 どうしても子眷属を増やしてほしい時なんかは別になってしまうが、そうした緊急時以外は今後も眷属たちの自由意思に任せるつもりだ。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 眷属たちに一気に渡した魔石は、その日のうちに消費され――たわけではない。

 進化のために最初に使ったラックが、思いのほか時間がかかったので話し合いの結果順番に使っていくことになったそうだ。

 アイの時には一分もかかっていなかったのに、ラックの時には半日近くかかったと聞いた時には驚いた。

 何故そんなことになるんだろうと首を傾げる俺に、アイが恐らくと前置きをして予想を教えてくれた。

 

 その予想とは、恐らく内包している世界樹の魔力の量に関係しているのではないかということだった。

 眷属の中では、アイが一番世界樹の魔力を持っている。

 もともと持っていた世界樹の魔力と新たに取り込んだ魔力がきちんと混ざり合うまでの時間に変化が出るのだろうというのがアイの予想だった。

 その予想は、進化が無事に終わって以前の通りに動き出したラックも同意していた。

 

 経験者二人の予想からいきなり全員で使って動けなくなる可能性が出てきたために、一気に使うのではなく順番に時間をおいて使おうということになったわけだ。

 進化のために意識を失ってしまって、アイとラックしかいない状態になってしまうと領域の防衛力が格段に落ちてしまう。

 さすがにそれはまずいだろうということで、話し合いが行われたのだ。

 それから乳飲み子を抱えているミアは、後回しになった。

 本人は多少残念そうにしていたが、さすがに乳飲み子を放置して進化を先にするわけにはいかない。

 当人も残念がっていたのはほんの少しの間だけで、すぐに母性が発揮されたのかきちんと納得して子供たちと一緒に寄り添っていた。

 

 ――というわけで三日ほどかけた眷属たちの進化は、次のような結果になった。

 --------------------------------------

 ラック:大梟→白銀梟

 シルク:蜘蛛人→女王蜘蛛

 ルフ:銀狼→銀大狼

 ファイ:火熊→暴風火熊

 クイン:魔蜂人→魔蜂女王

 --------------------------------------

 

 アイは以前の進化で賢樹人形になっているので変化は特にないが、渡した魔石を使って何やらアクサセリーのようなものを作って飾っている。

 具体的な効果はないそうだが、いざという時の魔力補給として使えるらしい。

 アイの魔力は眷属たちの中で一番多いはずなので、その「いざというとき」が来てほしくはないと思うのだが、備えあれば憂いなしということだろう。

 

 眷属たちがそれぞれ進化をしたことによって、戦力に関しても大幅に増大することになった。

 結果として領域の拡大も上がるので、魔石の作成もより早くできるようになるはずだ。

 あとはそれらの魔石を使って、子眷属たちを増やしたりすることもできるだろう。

 とはいえ雪も解けて、冬眠に近い状態だった魔物などが動き出す可能性もある。

 一部の魔物は冬眠をすることがダークエルフの情報からわかっているので、これからは四季の中で一番危ない季節といえるかもしれない。

 いずれにしても、今後の戦力拡大のためにも領域拡大はまだまだ続けていくつもりだ。

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