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(4)仕様?

本日2話目(2/2)

 木製の操り人形から可動式のフィギュアかドールの見た目へと見事に変化したアイ。ステータス的には《賢樹人形》という種になったようだ。

 その過程を詳しく聞いてみると次のような話だった。

 まず俺から渡された魔石を使って何をしようかと、世界樹の幹を背にしながら考え込んでいたそうだ。

 しばらくそうしていると、突然世界樹から『声』が聞こえてきて魔石を取り込んでの進化をするかと聞かれたようだ。

 その声に、世界樹のことを信じ切っているアイは喜び勇んで了承した。

 その瞬間、どういった姿かたちになるかという問いかけもあったようで、自分が望む姿を思い描いていくうちに気付けば今のような姿になっていたらしい。

 いや。もっといえばさらに成長したような姿を望んでいたのだが、残念ながら渡した魔石だとそこまでの『成長』はできなかったそうだ。

 今のアイは小学生の3、4年生くらいの背丈で、本来はちゃんとした(?)大人になりたかったと残念がっていた。

 

 そんなアイの急成長を、他の眷属がどう見ていたかといえば。

 変化前のアイは、世界樹に腰かけながら魔石をしばらく眺めていた。

 アイが新しい何かを作るときはそういう姿になることはよくあるので、その時は特に気に留めることもなかった。

 そんな状態が十分ほど続いていたのだが、突然アイの持っている魔石が七色に光りだした。

 その光は数分ほど続いたそうだが、不思議と目を焼くような強さの光ではなかったようだ。

 どちらかといえば、蛍の淡い光がアイの全身を包んでいるように見られたとのこと。

 五分ほどその状態が続いていたのだが、その光が消え去ったときには今のアイの姿になっていたということらしい。

 

「――――うん。とりあえず皆の意見はわかった。その上で確認だけれど、アイ、今の調子はどう?」

「絶好調。今までやりたくてもできなかったことが、いくらでもできそうです」

 人の体のように滑らかな動きを見せるアイを見て、それはそうだろうなあと納得する。

「そうか。ただし、あまり調子には乗らないようにね。今の体で、例えば傷がついた時なんかがどうなるかはわかっていないんだろう?」

「うん。そこは慎重にす……します」

「あー、アイ。無理に言葉遣いを直す必要はないんだぞ?」

「無理はしてません」

「そう? それならいいんだけれどね」

 俺としては言葉遣いはそれほど重要視していないのだが、それぞれがどう考えているかによっても変わってくるので何かを強制するつもりはない。

 今後規模が大きくなってきて、眷属以外の部下なり友人たちなりが増えてきたときには立場を考えなければならなくなるかもしれないが、今はそこまで立場を気にするようなこともない。

 今のうちからきちんと考えておけと言われそうだが、少なくとも今いる眷属にそれを強制するつもりはない。

 

「とりあえず今の状態についてはわかったよ。それで、今後についてなんだけれど、やっぱり魔石は必要になりそうかな?」

「なる。でも今すぐは必要ない……です」

「それは進化……変化? ――したばかりだからかな?」

「たぶん、そうです。魔石の魔力を受け入れる余地がなさそうだから」

「なるほどね。許容量が増えれば、また魔力を受け入れて進化する可能性があると」

「そう」


「あともう一つ気になったのが、世界樹から聞こえてきた声なんだけれど、それって今の俺の声だった?」

「それは……よくわからなかったです。似ているような気もするし違っているような気もしたから……」

「うーん。そうか……」

「で、でも、世界樹からの声だったことだけは間違いない」

「それは何故そう思うの?」

「声に混じっている魔力が世界樹のものだった」

「声に交じっている魔力、ね」


 正直なところ俺自身は声に魔力が混じるっているかどうかはわからない。

 ただアイもそんなことで嘘をついているとは思えない。

 アイが嘘をついているわけではなく、騙されている可能性もないわけではないがそもそもそんなことをして何になるのかということがある。

 結果としてアイは進化と呼べるほどの大変化をしていて、しかもそれは今のところ悪い方向ではなく、良い方向に変わっているのだから。

 

「とりあえず今の状況はわかった。それで? アイは何でそんな顔をしているんだ?」

「……怒ってない?」

「怒る? なんで? 渡した魔石を自由に使っていいって言ったのは俺だし、今のその姿を選んだのはアイ自身だ。特に怒るようなことは無いよ」

「そう……よかった」

「ただ、前と比べて動きやすくなったからといって、すぐに戦闘したりするような無茶はしてほしくはないかな。どう考えても感覚とか色々変わっているみたいだし」

「気をつけます」

「うん。それなら俺から言うことは何もないよ。繰り返すけれど、無茶だけは絶対にしないこと。いいね?」

「わかりました」

「よし。それじゃあこの話はここまで。――俺はちょっと確認することができたから、中に戻るね」


 最後はアイだけではなく、周囲にいた眷属たちにも伝えた。

 アイの体に何が起こったのかはそれぞれの立場からは聞けたが、もしかしたら何かのログが残っているかもしれないと考えて一度ハウスに戻ることにした。

 眷属たちの進化の時にもログは残っていたので、今回も何らかの形で残っているのではと思ったのだ。

 少なくともアイが進化したのであれば、その文面は残っているはずである。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 そんなわけでハウスに移動して端末でログ確認。

 あちら側で見られるのはステータスと省略されたログだけなので、細かく見たいときには端末で確認するのが一番なのだ。

 といっても端末でログを確認すると細かすぎるという問題があるのだが、慣れれば必要な部分を抽出することも可能なので割と便利な機能だ。

 勿論、すべてのログが流れているわけではないだろうが、知りたいことは割と知ることができる仕様になっている。

 

 というわけでアイの変化についてログの確認をしてみたが、間違いなく『進化』だという結果になっていた。

 気になるところはアイの進化について運営の恣意的な介入があったかどうかだが、正直なところこれはよくわからなかった。

 そもそも人外プレイヤーの『進化』や上位職への『転職』についても、ある程度の制約がある以上はそれが運営の恣意的要素だと言われればそれまでだからだ。

 一番気になったアイが聞いたという『声』については、ログではよくわからなかった。

 俺があちらの世界でたまによく聞いているメッセージと同じものだとは思うのだが、確証は全くない。

 これについては返信があるかどうかはわからないが、運営に確認のメールを送ってみた。

 一応仕様なのかの体で聞いてはいるが、ゲームの攻略などに関わってくる可能性もあるので具体的な答えが返ってくるかは不明だ。

 

 そんなことを考えていたのだが、ハウスに来たついでに掲示板を眺めている間に運営から返信があった。

 その速さにも驚いたが、ほとんど期待していなかった答えが書かれているのを見てさらに驚いた。

 それによると今回のアイの進化は完全にこの世界の仕様とのことで、特に運営が介入したということは無いそうだ。

 その答えを信用するのかという突っ込みを受けそうだが、そんなことを言い出せばきりがなくなるしそもそも運営への問い合わせ自体が意味をなさなくなってしまう。

 

 というわけでアイの進化についてはこれ以上深く考えるのはやめて、他の眷属の進化と同じようなものだと考えることにした。

 もしかしたら他の眷属も似たようなことが起こるかもしれないが、その時々で考えるほうがいいだろう。

 そんな結論を出した俺は、再び転生世界へと移動するのであった。

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