(1)ハウスの様子と掲示板からの情報
本日1話目(1/2)
※今日から一日2話更新になります。
ハウスへの移動については、分体生成を解除してから世界樹の本体でステータス画面(?)を開くと、そこに《ハウスへの移動》という項目が増えていた。
その項目を脳内クリックすると、しっかりと反応をして次に気が付いた時にはどこかのアパートの部屋のような場所に立っていた。
その部屋は大体十畳くらいのワンルームの部屋で、ステータスなどを確認するための端末の他にはトイレだけがついている。
それ以外はないのかと多少落胆していたが、それは端末で色々と確認していた時に色々な部屋が追加できることが判明した。
要するに、ハウジング要素があるということだ。
勿論ハウジングができるとはいえ、当たり前のように金銭のようなものを要求された。
ハウスでの通貨単位はわかりやすく日本円になっていたが、あちらの世界で得ることができた魔石を交換して通貨を得ることになる。
魔石と通貨を交換する前はゼロ円だったことから、前世での稼ぎなどは一切関係ないことがわかった。
魔石から得た通貨で得られるものは、ハウジング要素以外にもある。
というよりも、むしろこちらのほうが重要になるはずだと考えている。
何故なら通貨を使ってスキルなども付与することができることが判明したからだ。
今のところまだまだ細かい仕様はわかっていないが、掲示板を見る限りでは種族や職業から離れたスキルはより多くの金額がかかるようになっているらしい。
そう。ある意味俺が最も重要だと考えているのが、掲示板の存在だ。
掲示板はその名の通り言葉(文字)のやり取りだけで物品の交換などはできないが、情報のやり取りはできる。
その中から得られる情報は、ある意味で金銭よりも重要だというわけだ。
金銭でスキルを得られるようにはなったが、そんなものを使わなくても自力で得ることが可能だということも分かっている。
それであれば、どうにか自力でスキルを得ることができるような行動をとればいいことになる。
どんな行動でスキルを得ることができたのか、それを他のプレイヤーから聞き出すことができればこれまで以上に効率的にスキルを得ることができる……はず。
そんなことを考えて開いた掲示板だったが、いきなり衝撃の事実が判明した。
「――チュートリアルに半年以上もかかったのは俺だけ……ってか、時間の流れが違うってマジかよ」
ハウスには俺以外いないため独り言が増えてしまいそうだが、それでも思わず画面を見ながらそう呟いてしまった。
ちなみにハウスの中にいるときは普通に以前の姿のままなので、普通に話すこともできるし生理現象も普通に起こる。
――ということが掲示板に書かれていた。
ただいきなり暴発するということは無いようで、こちらの生理現象等は向こうでの活動時間からは切り離されているようだ。
そんな人体の欲求についてはともかく、今の問題はハウスとあちらの世界の時間の流れが違う可能性があるということだ。
例えばこちらで一時間過ごしただけで、向こうでは一か月以上経っていたなんてことになると面倒なことになる。
今はまだあちらの世界も眷属たちだけで対処できるだろうが、不測の事態が起こらないとも限らないからだ。
そんなことを考えていたがやはり皆も同じことを思ったようで、既にいくつかの考察がなされていた。
今のところハウスにいた時の時間に関しては、あちらの世界で不都合が起きないようになっているらしい。
例えばハウスで数時間過ごしていたとしても、あちらの世界ではほんの数十分寝ていただけとかになる。
一番いいのは夜寝るときにハウスに来るようにした方がいいとされていたが、そもそも木である俺にとってはあまり関係のない話だ。
今回のように、眷属たちに長時間応答ができなくなることを来る前に話しておけばいいだろう。
流石にひと月単位で不在になるのは困るが、今のところはそんなことにはならなさそうである。
そしてこれも掲示板のやり取りで気付いたのだが、人外は四割程度いるが植物系は俺一人のようだった。
少なくとも今のところは、俺一人しか掲示板での発言はない模様だ。
スライムもある意味では植物に近いと言えるかもしれないが、あちらは最弱の状態でも多少なりとも動けるし最強になった場合の夢がある。
かといって分体の状態でならともかく、本体の状態であちこち動き回れるようになりたいとは思わないのだが。
さらにもう一つ判明したのが、どうやら他のプレイヤーは普通(?)にRPGをしていて、戦略シミュレーション系は俺だけのようだった。
領域という概念が出てきたときからそうだろうなとは考えていたのだが、例の中ボスが出てきたときにはそれを確信していた。
……のだが、まさか俺だけが戦略シミュレーションになっているとは思っていなかった。
もっとも今後各プレイヤーが領地を持つなんてこともあり得るだろうから、その時は同じような感じになる可能性は大いにあるのだけれど。
掲示板でのやり取りでもう一つ興味深かったのが、例のキャラ作成で『運営のおすすめ』を選んだ者は、人外になる確率が高かったらしい。
普通に人系になった者もいるのだが、人外になった者は半数以上が『運営のおすすめ』を選んでいた。
だから何だと言われればそれまでなのだが、敢えて運営が人外を選んだ理由も今後出てくるかもしれない。
プレイヤー同士での交流が掲示板以外に無い以上はあまり関係のない話かもしれないが、なんとなく心の中に留め置くことにする。
そんな感じで掲示板の内容確認を終えて、次はいよいよお楽しみタイムに移った。
とはいっても最初に考えていた通貨とスキルを交換するのは、保留することにした。
その理由としては、何とか自力で得られるスキルよりも重要そうなものと交換できることが判明したためだ。
その重要そうなものというのは書物のことだ。
スキルの場合は眷属も含めて一人につき一回っきりだが、書物であれば何度でも読み返すことができる。
とはいえ本の形態で読むのを苦労する眷属が多いのだが、そこは声に出して読んでもらうことなどで対処してもらう。
……というよりも、書物に感心を示しそうな眷属が書物を読むことができるようになっているようにも思える。
ラック辺りは本に興味を示しそうだが、二つある足を器用に使ってページをめくっていきそうな気もする。
ルフとファイに関しては……まあ、お察しといったところだろう。
それ以外の三人は、本のページをめくれそうな形態なので特に心配はしていない。
さらにもう一つの理由として、スキルを直接買う場合は本を購入するよりも高くなるというのがある。
円で換算すれば、本だと一冊数十万程度で手に入るのだが、スキルは安くても百万単位になる。
序盤でそんな散財するよりは、本での知識入手に掛けようというわけだ。
そんな感じで直接スキルを得るのではなく書物から間接的に知識を得ることにしたことと、さらに金銭の重要そうな投資先(?)が見つかった。
それが何かといえば、眷属たちを呼び出すことができるようになるのだ。
今のところは領域が少ないために選択することができなくなっているが、選択肢の一つとして『眷属の召喚』という項目がある。
その項目を使って眷属を増やすことができれば、これも戦力強化として重要な使い道になるはずだ。
今も領域の広さで制限されている以上、眷属の数にも限りがあると考えたほうが良いだろうが、今の六人だけでは終わらないと分かっただけでも十分である。
まずはそのためにも、領域の拡大は早めにしていきたいという方針に変わってきた。
勿論、焦って肝心の眷属自体を失ってしまっては元も子もないので、無理をするつもりは毛頭ないのだが。
いずれにしてもハウスに来ることができて、色々な未来が見えてきたことも確かだ。
とにかく今は、眷属たちが頑張って得た魔石を使って幾つかの本を購入することにした。