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(11)初の大物取り

本日1話目(1/3)

『魔法を発現したことにより新たなスキルを覚えました。ステータスをご確認ください』


 すでに聞きなれたメッセージとともに新しいスキルを覚えたことがステータス画面によって確認できた。

 今回獲得できたスキルは『基本魔法』で、いわゆる四属性と呼ばれている基本属性の簡単な魔法が使えるようになった。

 実験で使えるようになった魔法は水の魔法だったが、このスキルがあることによって他の土(地)、火、風も使えるようになっている。

 とはいえ基本魔法は、火が起こせたり弱い風を吹かすことができたりなどができるだけで、戦闘向きの魔法とはいえない。

 戦闘向きの魔法を使えるようになるには、これ以上のスキルを覚えるなりしなければならないのだろう。

 俺自身もこれらの魔法だけで満足しているわけではないので、これからも魔法を鍛えていくつもりだ。

 

 そんなこんなで初めて自らの手で魔法を発動をしてから一週間ほどが経ったある日。

 俺たちにとっては、大きな分岐点となる存在が確認された。

 一番に発見したのは周辺探索に出かけていたルフで、領域を出てから彼の足で半日ほど進んだ場所に今までに会ったどの魔物よりも強大な存在を見かけたという。

 ルフの話では一目見て自分だけでは勝てないと判断して、すぐにこのことを知らせるべく引き返してきたそうだ。

 

 その報告を聞いた俺は、すぐにルフをほめた。

 本能のままに相手に向かっていくのではなく、きっちりと「命大事に」という指示を守って情報を持ち帰ることを優先してくれたためだ。

 そのルフのお陰で次の一手を打つことができる。

 俺からの指示を待っているのか、同じように報告を聞いていた眷属たちも興味津々な様子でこちらをうかがっていた。

 

「よし。それじゃあ指示を出す。アイとクインはここで俺と一緒に留守番。帰ってくるべきホームが無くなっていては意味がないからね。残りの四人は、目標を釣ってくるように(・・・・・・・・)

「釣るのですか!?」

「俺もそうだけれど、君たちの場合も領域内で戦ったほうがいいというのはわかっているからね。だったら敢えて向こうのフィールドで戦う必要はない」

「追ってこなかった場合は?」

「放置でいいんじゃないかな? その場合は何度か繰り返せばそいつの縄張りもはっきりするだろうし。つかず離れずでいいと思うよ」

 基本的には、無駄な戦闘行為はしないというのは変わっていない。

 相手が縄張りを守ることだけに固執しているのであれば、無理に倒す必要はない。

 土地が必要になった場合は確実に倒せると思った時点で倒しに行くが、現状はそこまで広い土地を必要としているわけではない。

 ぎりぎりになってから拡張するのも駄目だが、今は無理をすることもない。

 

 無理は禁物という俺の考え方は、これまでの期間で十分に眷属たちに伝わっているはずだ。

 何よりも眷属の命が失われることを恐れているということも。

 現金な話になってしまうが、眷属がどうやって増えていくかわかっていない以上は、うかつな命令で失うわけにはいかない。

 それがなくとも、折角六人で始まったのだからできる限り一緒にいたいという感情的な理由もある。

 

 とにかく念には念を押した状態で四人の眷属を送り出した。

 あとは彼らが思惑通りに領域内まで引っ張ってこれるか、領域外で倒してしまうか、もしくは相手が縄張りを守るタイプで何もせずに帰ってくるか、三択の状態で待つことしかできない。

 送り出した四人の眷属たちがどういう状態になっているかは、俺自身は確認することができない。

 そのためジリジリとした気持ちのまま結果を待つことしかできないのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 結論からいえば領域外で見つかった強大な存在は、討伐隊を送り出した翌日に倒された。

 討伐体が現地に着いたのはもうすでに日が沈んでいたため接触するのは翌朝ということになり、相手がこちらの気配を察知した時点ですでに戦闘モードになったようだ。

 その様子から話し合いをするのは無理とすぐに判断して、選択肢の一つである領域まで釣ろうとしたがそれも相手の戦闘能力が高すぎて断念。

 結果、その場で討伐をすることになり、四人いるという数の利を生かして相手を翻弄しながら徐々に体力を削っていったそうだ。

 戦闘自体が半日近くかかったことからも激戦だったことがわかる。

 

 その時の戦闘の様子は後から戦闘組の口から聞くことになるのだが、実は俺自身は前もって討伐されたことを知ることができていた。

 何故なら例によっていつものメッセージさんが流れてきたからである。

 

『他の領域の主が討伐されたことにより、領域拡張の条件が整いました。拡張を行いますか?』


 そんなメッセージが流れてきたので、当然のようにすぐさま領域の拡張を行ったのだ。

 眷属たちが領域内にいれば戦闘能力が上がることが分かっている。

 大きな一戦をしたはずの戦闘組のためにも拡張はすぐに行っておきたかったのだ。

 メッセージの内容からも彼らの向かった先で拡張が行われることが予想できたので、慌てて拡張した理由の一つになる。

 

 そしてメッセージが流れて来たときは、分体の状態でアイとクインの傍にいた。

 そのためメッセージを見て慌てている俺に気が付いたのか、アイとクインが何かを探るような視線を向けてきた。

 その視線に応えるために説明をしようとしたのだが、それよりも先にさらに別のメッセージが届いた。

 

『おめでとうございます。領域の主の討伐による拡張が初めて行われました。これにてチュートリアルを終了いたします。今後はステータス画面からハウスへの移動が可能になります』


 そのメッセージを確認した俺は、思わず数秒の間硬直してしまった。

 まず最初に思ったのは、確かにハウス的なものがあると言っていたなあ――だった。

 それに続いて思ったのは、ここまでがチュートリアルって長すぎないか!? ――というものだ。

 そもそもハウスのこともチュートリアルのことも半ば忘れかけていた俺が言うのもなんだが、あまりにも長すぎるだろう。

 ――そう思ってしまったのは、誰にも責められないはずである。少なくとも俺の知る日本社会にあるゲームにもまれて育った者ならば。

 

 どうやらハウスに向かうのはいつでもできるようなので、討伐組が帰ってくるまで待つことにした。

 折角初の大物を倒したのに、主である自分がいなければ彼らはがっかりするはずだ。

 そして、その考えは間違っておらず、討伐組は帰ってきて俺の姿を見るなり喜びの感情とともに突進してきた。

 分体とはいえ精霊の小さな体に眷属たちが突進してくるとどうなるか――結論、吹き飛ばされる。

 そんなどうでもいい情報を知ることができた俺に、正気になった眷属たちは平謝りしてきた。

 

 彼らの気持ちも十分に理解できるので、吹き飛ばされたことに関してはすぐに不問にした。

 それよりも初の大物取りをした彼らのことをねぎらうのが先だ。

 食事をするという習慣がない集団なので飲めや食えやの宴会のようなものは無かったが、初めてといっていいくらいの喜び方で彼らの行動をほめた。

 戦闘組だけではなく、留守番組になった二人の眷属をほめることも勿論忘れない。

 彼ら眷属にとってのホームである世界樹を守っていたのは、まぎれもなくアイとクインの二人だ。

 実際、一度だけだが討伐体が向かった方向とは逆から魔物の侵入があった。

 その魔物は、大物のことで気が立っていたクインによってあっさりと倒されていたのだが。

 

 いずれにしても初の大物取りは無事に戦闘の勝利という形で終わった。

 副賞としてこれまでにない大きさの魔石を手に入れることができたが、それは今の俺にとってはおまけでしかない。

 とにかく討伐組にはお疲れさまと十分に休むようにと言った俺は、ようやくハウスに向かうことにした。

次は14時投稿になります。

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