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(10)魔法の発現

本日5話目(5/5)

 無事に新しいスキルの攻撃方法を得た結果、自分だけの力で魔物を倒すことができた。

 ついでといってはなんだが、その余波というか派生してきた能力として、枝根動可のスキルを使って倒した後の魔物から魔石を回収することも出来た。

 今のところ領域内に入ってきた魔物を眷属たちがうち漏らしたことはないのだが、今後さらに領域が広がってうち漏らしが出てきた場合に、|俺自身≪世界樹≫だけでも討伐から魔石の回収までできることになる。

 今後使うことがあるかはわからないが、最後の砦としてできるようになっておいて損はないだろう。

 問題があるとすれば、今のところ回収した魔石の使い道がほとんどないことくらいだろうか。

 例えば経験値入手なんかに使えればよかったのだが、そうは問屋が卸さないといったことだろう。

 

 さらに直接魔物が倒せることになった恩恵として、得られる経験値が多くなったことがある。

 これは眷属に任せて倒すよりも、直接自分自身で倒したほうがいいことを意味している。

 経験値を得てことにより能力が上がるのであれば、是非ともどんどん倒していきたい。

 ――といいたいところだが、これには少しばかり問題点があった。

 

 その問題点とは、基本的に領域内に入ってくる魔物を倒すのは眷属たちの役目になる。

 一か所から攻められた場合は自身の能力でも倒せなくはないが、複数の個所から同時に責められた場合にはどうしても眷属の力が必要になる。

 その時に眷属の力が不十分であれば、簡単に世界樹本体まで攻撃が届いいてしまうことになる。

 そう考えると俺自身のLVを上げるのは勿論のこと、眷属たちもしっかりと力をつけてもらわねければならない。

 そのあたりのバランスは、ある意味で育成ゲームの醍醐味ともいえるだろう。

 

 ちなみに枝根動可というスキルを得たことは、すぐにルフから他の眷属たちに広まった。

 その結果、すべての眷属がそのスキルを見たがって、次から次へと魔物を根の届く範囲まで呼び込むことになった。

 俺自身としては向かってきた魔物を倒すだけのお仕事で、わざわざ魔物を探し出してきて釣ってくるという役目をしていた眷属たちの方が大変だったと思うが、皆が満足そうだったのでそれについて特に何かを言うことはなかった。

 それよりも、今後も毎回魔物を釣ってこようかと言い出したのを聞いて、慌てて止めるほうが大変だ。

 どうやら眷属たちにとって|俺≪世界樹≫自身が魔物を直接倒すのはとんでもない雄姿に見えるようで、非常に残念がっていたのだ。

 

 どうにか眷属たちを抑えて、これまで通りにこちらから頼んだ時以外は皆で処理するようになった。

 その結果にホッと一安心した俺は、また新しい力を身に着けるべく、本体の中で色々試したり眷属たちから話を聞きこんだりした。

 次にどんな能力を得ようとしているかというと、それは勿論(?)、純粋に魔法の力を得ることだ。

 枝根動可というスキルのお陰で、魔力の並列処理が可能であることがわかった。

 それであれば、本体から見ればすでに魔法を使っている状態である分体の状態のままでも魔法を使うことができるのではないかと考えたのだ。

 

 ただし魔法の並列処理は自分自身でどうにかするにしても、現実世界に魔法という現象を起こす理屈が今の俺にはいまいちよくわかっていない。

 そのため気軽に魔法らしきものを使っている眷属たちに話を聞いたのだが、結果としてはあまり芳しくなかった。

 魔物にとって魔法を使うということは、人にとって攻撃前に腕を振りかぶると同じようなもので、理屈で考えてできるようなものではなかったのだ。

 自然にできているものをどうやったらできるのか、そのことを他人に教えるというのは非常に難しいことらしい。

 これについては、人も呼吸すること自体を他人に教えることなどなく、いざ教えるように言われて戸惑うのと同じことだろうと思うことにした。

 

 というわけで甘い計画はいきなり頓挫してしまったが、完全に諦めたというわけではない。

 眷属であったり、時には向かってきた魔物が使った魔法を観察して、どうにか理屈でとらえることができないかと考えた。

 これは後程判明するのだが、この考え自体は半分正しく半分間違っていた。

 というのも魔物や眷属が種族に頼った魔法を使っているということは、世界樹自身が使える魔法を探るべきだったのだ。

 あるいは種族由来のものではない共通で使えるような魔法は、それとは別で考える必要があった。

 それに気づいたときには若干後悔することになるのだが、残念ながらこの時のおれはそれには気づいていなかった。

 ただただ魔法が使えるようになるために、ひたすら他者が使っている魔法を観察し続けたのである。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 魔法を使えるようになるべく観察をし続けてから一週間ほどが経っていた。

 流石にこれはもう駄目なのか手法が間違っていると判断したので、改めて基本に立ち返って考えることにした。

 ただ基本に立ち返るといっても、俺自身にあるのはいわゆるオタク文化から仕入れた情報くらいしかない。

 それでもそちら方面からの知識もこの際フルパワーで使ってみると決心してやってみたのが、いわゆる魔法の三段論法である。

 簡単に言ってしまえば、魔法の準備をして、魔法のイメージをして、魔法の発動をするといった方法だ。

 魔法におけるこの考え方はいろんな作品で見られるもので、この世界でも当てはまらないかと考えたのである。

 

 というわけで早速試してみたのだが――、

「まじかよ……」

 分体の状態で思わず脱力して崩れ落ちそうになるほどあっけなく、目的にあった魔法が発動していた。

 具体的にいえば、右手の人差し指の先から水がチロチロと流れ出ていたのだ。

 これまでの一週間の苦労はなんだったんだと言いたい。

 

 これまでの過程はともかくとして、目的の魔法の発動は無事にできたのでいったんおさらいをしてみる。

 まず第一段階である魔法の準備だが、これに関してはすでにできるようになっていた。

 というのもすでにスキルとして存在している魔力操作がそれに当たっていた。

 

 さらにそこから魔力を使って魔法のイメージをするのだが、ある意味ここが一番の問題だった。

 今まではこの部分を眷属や魔物が使っている魔法に当てはめていたのだが、ここを一番身近な水に置き換えて考えた。

 一番身近に感じたのが水だったのは、単純に体の中を流れている水を感じ取れるようになっていたからだ。

 その水の流れを想像して発動したのが指先からチロチロと流れている水だったので、大きな間違いはない。

 ……どころか、そのものだと言ってもいいだろう。

 

 そして最後の魔力の発動だが、これが最後の砦だった。

 そもそも世界に魔法の現象を起こすのは、この発動という|鍵≪キー≫が起動しないといけない。

 それゆえに、呪文というわかりやすいキーが準備されているのだ。

 いきなり無詠唱で簡単に魔法が発動する世界であれば、魔力の扱える子供や赤ん坊が好き勝手にあちらこちらでバンバン魔法を発動する危ない世界になってしまう。

 

 そうした事故を防ぐために存在している呪文を、恥ずかしいという理由で忌避しては意味がなかったということだ。

 なんて力説してみたが、要は「無詠唱カッコイイ」という勘違いのもと呪文を避けて通ってきたのが間違いの元だった。

 これは後程判明するのだが、呪文を唱える場合と無詠唱だと後者のほうが魔法の発動が早いとされることがある。

 だがこの世界ではそんなことはなく、時には素直に呪文を唱えるか何らかの道具や体の動きを使ったほうが速いということが判明するのは、まだまだ先のことだ。

明日の投稿は3話で、8時開始になります

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