スライム
多分皆真っ先にドラゴンを見に行こうとしていたのだろう。今の言葉で全員がどうしようか躊躇っている。
「やっぱ俺ドラゴンはいいやあっちいこ…。」
「うん、そうだよな。烏滸がましいよな。」
「俺は黒狼でも見に行こっと…。」
ドラゴンの方を名残惜しそうに見ながら、皆ゾロゾロと移動していく。流石にあんな事を言われてまでドラゴンの方に行く人はいなさそうだ。
テイムされているからといって、他人にどの程度まで効力があるかは分からない。騎士団だから無いとは思うが、主人以外を殺してもいいと命されていても不思議ではない。
「ソフィアはどの子から見る?俺ドラゴン見に行きたかったけど命のほうが大事だからな!やめたぜ!」
少し悔しそうにはにかむリュー。
「とりあえず、スライムかな…。」
「スライムかー、珍しいよなあ。俺はあっち行くからまた後でな!」
「わかったよ~。また後でね。」
流石にこれだけ魔物がいることだし、わざわざスライムを見に行くこともないだろう。リューは先程誰かが言っていた黒狼がいる方へ向かっていった。
狼の魔物にも色々いる。黒狼や、白狼、聖狼など。色によって得意とする魔法が違うらしい。
スライム可愛いんだけどね…。
私はまだ魔物を斃したことがない。知識としてどの魔物がいるかは理解しているが、こうして生きた魔物を見たのは初めてだ。
私の身の回りにいる人達が過保護すぎて、魔物狩りはさせてくれなかった。騎士団に入るなら、どうせ否が応でも沢山魔物を狩ることになるだろう、と言って騎士団に入る前は一度として生きた魔物にあったことがない。そんな私の目にはスライムでさえ輝いて見える。
スライムの近くまで歩いていく。
少しくらい話しかけるのはいいかな…?
近くで見るとプルプルモチモチしててなんとも可愛らしい…。テイムするときはまずはスライムにしよう。そう心に決めてから話しかける。
「初めまして。私はソフィア、よろしくね?」
その言葉に応えるかのようにスライムはピョンピョン跳ねる。すごい跳ねる。
よく見ると、図鑑に乗っていたスライムとは色が違う。普通ならもう少し灰がかった水色なのに、透き通るような水色だ。特異種なのだろうか。そして跳ねた反動でとてもプルプルしている。
我慢できなくなった私は思わずお願いした。
「少しだけ、触ってもいい…?」
するとスライムがピョーンという擬音にふさわしい動きで私の手の中に来てくれた。急いで両手を差し出す。するとすっぽりその中に収まった。
「わわっ!」
いきなり来られて少し動揺したが、言葉は通じるようだ。とても嬉しい。あとすごいプルプルしている。少しくらい触っても大丈夫だろうか。
「触るね~…。」
ふに、ふにふに…。
やっぱりスライムをテイムしよう。本当は今すぐにテイムしに行きたいくらいだ。触り心地が最高すぎる。このスライムをテイムした人もこの触り心地にやられたのだろうか…。
そう思いつつ、両手の中にいるスライムを少しの間ふにふにする。
普通のスライムは意思疎通が取れないからこういう変異種を探すことからだよね…。頑張ろう。
また心の中で決めごとを作り、お礼を言ってからスライムと別れる。
次はどこに行こうかな…。
周りをキョロキョロしていると、頭の中で声がした。
『ぬぅ、珍しい者が来ておるな。』
ありがとうございます。今日は休みなのでたくさん投稿できたらなって思います。後でイメージ図も載せます。多分…。