魔物
しばらく聖女のことについて考えていると時間がだいぶ過ぎていた。
まずい、あと7分くらいしかない!
急いで先程の広場に行くと、そこには焼き焦げて原型をとどめていない何か魔物がいた。
「え、なにこれ…?」
思わず口に出してしまうと、近くにいた男の人がそれに応えたようにこちらを見た。
「これはさっきの騒ぎのものになった魔物でクローベアらしいよ。黒焦げで原型をとどめていないけど。普通のクローベアならランクCだけど、変異種で普通のより2倍以上大きくて動きも桁違いで苦戦したらしい。多分ランクAって騎士団の人達が言ってた。」
「あっ、色々教えてくれてありがとうございます。」
見たところ騎士服が見習いのものだし同期の人かな?
「私はソフィアです。同じ見習いの方、ですよね?これからよろしくお願いします。」
「あ~そういう堅苦しいのいいや。普通に喋ってよ。ソフィアよろしくね。」
出された右手に応え、握手をするととてもニッコリとしてる。
「俺はアンドリュー。リューって呼んでよ。」
「分かった。リューよろしくね。」
「うんうんそれそれ。」
同期なら口調崩しても大丈夫か、って思ったけど正解だったみたい。リューがすごくニンマリしている。金髪長身のイケメンがニンマリしてるとなんか、合わないな…。
「それでここ集合だったんだけど、あの魔物がいるからもう少し待てってさ。」
「だから皆そこら辺に散らばってるのね。」
魔物にはランクというものがある。下はDから上はSまで、この変異種のクローベアがAランクとなると普通の人が何人集まってもこんな丸焦げにできる相手じゃないんだけど…。
「やっぱすごいよな騎士団って。早く見習いから卒業したいぜ。」
「気がはやいよ~。まだ入って一日目じゃん。最速でも半年はかかるって聞いたよ?」
「知ってるけどさ~。やっぱこういうの見ちゃうとね。あ、ちなみにこのクローベアを倒したのは第二団団長のマーヴェさんらしいぜ。」
団長自ら赴くってことはやっぱり強かったんだ…。そうだよね、普通の騎士団の団員でも並の人が束になっても敵わないくらい強いのに、あんな酷い…。
先程の惨状を思い出して少し悲しくなった。私が治したからと言って、一度はああなっていたんだからすごい痛かったんだろう。これからのことを考えて絶望したんだろう。
騎士団というのは戦地にも魔物狩りでも最前線に行くからこんなのは珍しくないだろうけど、慣れてしまうことなんてありえないと思う。
「それで、この魔物に結構やられたらしくて結構怪我が酷い人も居たけど、神様のお導き?ってやつで完全に治ったらしいぜ。すげえよなあ…。」
「あー、うん、すごいよね…。」
それ実は私だったり、するんだ…よね?
なんだかまだ実感がわかない。当分はきっとこのままだと思う。
今後もこの能力を使うときがきっとくるからそしたらとりあえず隠れて使おう。なんとなくそう決めた。
ありがとうございます。