第6話 小さな祈り
旅のきっかけとなる話です。
雪の日の少女の話です。
書き直しをしたので再び読んでもらえれば
嬉しいです。^^
『・・・おまえの負けだ お前はもう必要ない。
モノとして一生 生きろ。』
いつも月を見ながら泣いていた
夜風にあたることが 心地よくて いつも外にいて
掃除人として ずっと働いていた あの頃
掃除人としか居場所がなかったから
人として 必要されなくなったから
モノになって働くんだ。
悲しい決心かもしれないけど
まだ諦めたく無かったんだ
・・・
ただ 諦めが悪いだけ
だよね
その日から私は働いた。
夜遅くまで働いて 疲れたら 冷たい床で横になって
毎日 毎日・・・
体調悪くなっても ずっと働いて
限界・・・だった。体が動かなかった。動かせなかった。
もう モノとしての価値も無いんだ。
生きてても仕方がないね。
――倒れている少女の近くに 人が近づいた。
瞳はただ 少女を睨みつけていた。
あざ笑いながら 少女に言葉をかけた。
残酷な真実を
真相を聞かされてから 少女は雪に捨てられた
真相は 少女の心を踏みにじるような話だった。
冷たい
痛い
「・・・ん?」
――少女が捨てられてから5時間は経過していた。
真っ白い雪が 辺り一面に広がっている。
何もかもが凍りつきそうな気温だった。
だれかがいる 近ずいてくる そばにくる
わたしを見ないで
捨てられて モノとなった私を
―――青年は立ち止まった
青年は黒いコートに 灰色と黒のチェックのマフラーをして、
瞳の色は深い青で 髪は綺麗な銀髪だった。
髪には、雪が付いていた。 吐く息は白い。
今日も この街は凍えるような寒さだ。
公園のベンチの近くの雪に沈んでいる何かを見て
不思議に思い 青年は近寄った
あれ何だ・・・?
近づいてみると 茶色の髪が見えた
それは 白い服を着た少女だった。
少女は目を瞑って横たわっていた。
8〜10歳くらいで
雪に負けないくらい 白く透き通った顔色だった
「・・・」
少年は 少女の髪や顔に付いた雪を払う
「・・・おーい」
・・・
「・・・生きてんのか?」
少女は小さく口をうごかした
瞳からは 涙が流れていた 涙は頬を伝って雪に滲む。
少女は泣いていた
・・・
「何してん・・・だよ」
体を揺らしてみる
無反応
・・・
違う
目を覚まして
瞳をこっちに向けた
真っ黒な瞳の色
虚ろな瞳 その瞳は どこまでも遠くを見ていた
なにもかもが終わってしまった目
生気がまったく感じない目
その瞳から 溢れ出す涙
こんな雪の中埋もれて
独りで涙を流す 少女
全身雪を覆い被って
頬や手は 寒さで赤くなって 指先は凍っていた
顔色は真っ青 冷たく 死んでいるような瞳
青年は驚きを隠せず
何歩か 後ずさりをした。
その姿を見て 胸が裂ける様な想いだった。
消えそうな声で ぽつんと言った
「・・・寂しい」
心からの悲しみが 目に浮かんだ
「悲しくて・・・痛い」
「痛い・・・苦しいよ・・・っ」
ぼろぼろと涙を零した。
息は荒く 体は震えていた
白く細い手を胸に寄せて、願うように手を組んだ。
「か・・・ま」
小さい声だった。
「? 鎌・・・」
「神・・・様」
願った手を 強く強く握っていた
こいつに何があったのか 俺は知らない
でも この状況を見て 思うことは
こいつは独りだったんだ。
こいつが頼れるのは
親でも 仲間でもなく
触ることもできない
見ることもできない
不確かな存在
聞くことも 話すことも出来ない 遠い存在
神・・・か
神に 見捨てられたとか裏切られたとか
憎んでる奴 腐るほどいんのにな・・・
お前は 疑わないのかよ
・・・
少女が小さく囁いた
「神様・・・ありが・・・と」
「こんな・・・私を生かして・・・くれて」
「まだ生きてるんだよ・・・
あともう少し 綺麗な雪を見ること・・・できるね」
・・・
お前は幸せにしてほしいから祈るんじゃなくて
感謝・・・してたんだな
――青年は深いため息をついた。
このままじゃ死ぬよな・・・
「・・・しょうがねぇか」
俺は 雪の中に沈んでいる体を持ち上げた
・・・軽い
「・・・つめてーな」
少女は顔を向けた
「・・・・・・」
「だ・・・れ・・・?」
名前をいうのも どうだろうな。
言ったところで なんにもなんないし。
「んー・・・そうだな。」
軽くジョーク 半分本気。
「お前をさらっていく 誘拐犯。」
「・・・?」
こいつが守ることが出来るなら
誘拐犯になって 捕まっても 後悔しない。
・・・放って置けないしな。
・・・。
やっぱり これって
誘拐・・・になるんだろうな
なんでこんなに こいつが 気になるのか
自分でも分かんねぇけど 勝手に体が動いていたんだ
きっと
ただこいつの笑顔が見たかった。
守りたかったんだ と思う。
――無垢な瞳の少女を連れて、青年は歩き出した。
少女と暮らす生活が始まる。
それから
少女は、頑なな閉ざした心を
青年に少しずつ心を開いていった。
少女は笑うようになった。
青年も少女の笑顔に癒されていた。
幸せが始まった。
幸せの始まりがあの子の
旅の目的となった理由。
けど
幸せな日々は、
けして
長くは続かなかった――
読んで下さってありがとうございます。
次は旅の続きを書こうと思います。
弥夢が詩優と接している時とは違う
弥夢が見れると思います。
次回も宜しければ見て下さい。