第4話 光と闇の森
<弥夢>
もう、どのくらい歩いただろう
この森の中は暗く 足場が悪い
6,7時間は歩いた・・・?
なのに
詩優様はなぜ 疲れていないのだろう
なぜ あんなに楽しそうに 歩いているのだろう
この旅は 決して楽しいものではないのに
「詩優様 ・・・疲れていませんか?」
今日で23回目の言葉
「全然大丈夫だよ! 弥夢は大丈夫? 疲れてないかな?」
23回目の返答
「・・・私は平気です・・・けど」
きっと 詩優様は幼い頃から幻術士として
厳しい修行をしてきていたのだろう
体も精神も
この旅は心が強くないと・・・続けられないから
命を狙われる立場だから ずっと気を張っていないといけない
・・・それは今日限りでは無く これからずっと
心を落ち着かせる事なんて
もう
一瞬もできないのに
詩優様は私を見て心配そうな表情をした
けれど
すぐに微笑んで
目を瞑って 私に話てくれた
「私・・・弥夢と旅に出ることができてよかった。」
・・・
「小さな頃から考えていたの」
暗い森の中で
影を照らすように
「1人で旅に出るのって 恐いなって 」
やさしい 光が 樹に灯り
「旅に出るのが憂鬱で 不安だったの」
「・・・とても重いものに感じたの」
花に たくさん 降り注ぎ
「弥夢が一緒にいてくれるから この旅が・・・楽しいんだよ。」
夜道を 照らす
「弥夢がいるから この旅でも
空も 樹も 花も 鳥も 忘れずに
綺麗だなって 気付くことができるんだよ 」
暖かで 仄かな 光
「こんな私だけど 」
「・・・弥夢 よろしくね」
風が吹き 華が舞った
夜の月にも負けないぐらい
綺麗な夜の光
闇夜を照らす 影と光が唄う
切なく 寂しい 命のうた
私は 嬉しさと驚きが混じって
すぐに声が出せなかった。
涙が目に溜まった
どんなに悔しくても 辛くても 悲しくても
ずっと流さなかった涙
涙を堪えるのには慣れていて
流すことを忘れていた。
そのうち 堪えなくても
流れなくなった。
もう 流す必要が無いって分かったから
だから
初めてだった 嬉しさで涙を流すことは
「・・・ありが・・・とうござ・・・います」
声が震えて小さく細い声しか出なかった
涙が溢れた
「ありがとうは わたしのセリフだよー」
詩優様は手に小さな光を浮かばせた
「はいっ 弥夢にあげる」
その手を差し出した
その光を掴もうとしたら
光は空に溶けて
風になった
私は手を見た
腕に銀色のブレスレットがついていた
白い粒が光りだした
「おそろいなの」
にって詩優様は笑った
樹の光 花の光 闇夜に浮かぶ光
光のブレスレット
それらは 全て幻
詩優様のつくった 幻
詩優様が昔 言っていた言葉
「攻撃用の幻術より
幻を作る方が難しくないしね 私 好きなんだ」
・・・でも どうしてですか
平和主義で優しいあなたが
なぜ 幻術士になる事を 望んだのですか?
その偉大で強力な力は
何に使うのですか?
あなたがこれからする事は
分かりません・・・
けれど
疑いは全く抱きません
あなたの行動には理由があると
分かっています・・・
だから
あなたが私を消そうとしても
私が死ぬことになっても
私は あなたを守るだけです
ただ それだけ・・・です
あなたは光
私は闇
私達は 相容れぬ関係だから
ここまで読んで下さってありがとうございます!
次も森の中での話を書こうと思います。