第15話 裏切りし者
暗い海の底
ここは海ではなく 地獄に近い場所だった。
「このままだと・・・死ぬぞ」
弥夢は冷たい瞳で、紅い瞳の者達に向かって言った。
紅い瞳の者達は、不機嫌そうな表情を浮かべた。
「それは お前が護衛してるからだ」
「未無だって覚悟しているんだろ」
「このままだったらまた魔族は滅びるな。」
紅い瞳の者・・・魔族たちは口々に喋りだした。
だが その表情はやつれていた。
魔族とは、魔術を得意とする種族で
人からは軽蔑される種族であった。
その為 魔族は魔術を使い、たくさんの人間を殺してきた。
魔族は 油断した時や魔術を使用する時に、瞳は紅い瞳になる。
闇属性は吸収し、光属性を苦手とする。
弥夢は暗い声で語った。
「私も最初は幻術士を殺すつもりだった。なんせ魔族の仇だからな。」
癇に障ったように魔族は口を挟んだ。
「未無…お前は魔族を裏切り 人と馴れ合っているだろ。・・・なぜだ」
「幻術士・・・詩優様に助けらたからだ。私には あの人を殺せない。」
「あの人になら殺されても構わない。」
弥夢は迷い無く言った。
弥夢は魔族を見渡して、口元を緩めた。
「それにしても お前ら随分やつれたな…」
弥夢はあざ笑いながら 魔族に向かってそう言った。
魔族たちは怒りを隠せずに
弥夢に向かって言葉を吐き捨てた。
「幻術士の力が全て揃って、力を持ったからだ。
今回の幻術士は光属性だから、俺達には痛いぐらい眩しいんだよ!
…そんぐらい分かっているだろ!」
「あぁ。そうだったな…。」
弥夢は、魔族達の怒りに怖気ずくこともなく平然と言った。
・・・
「光が眩しいぐらい痛い」
――私も魔族だが…
何かを思い出したように腕を見た。
白いブレスレット
『これ…弥夢にあげるね。』
「これが私を守っているのかもな・・・」
少し弥夢は表情は少し柔らかくなった。
だが、その表情は一瞬にして消え 冷たい瞳に戻った。
「用件をさっさと言おう。お前達に力を貸して欲しいんだ」
魔族達の空気が張り詰めた。
「…だれが裏切り者に力を貸すかよ。」
「さっさと消えろ。」
「人間と馴れ合ってろよ…」
弥夢は深いため息をついた。
「・・・お前達に有益な話だと思うが」
―――弥夢は用件を話し出した
魔族達はにやりと笑った。
「…ふーん やってやろうじゃん。」
その話に魔族たちは承諾した。
【未無・・・幻術士を裏切る気か やるじゃねえか】
魔族達は笑いだした。
未無の呪文により
魔族達は力を取り戻し始めた。
◆ ◇ ◆ ◇
「んー。気持ちの良い朝だね!」
詩優は外にでて背伸びをした。
「詩優さま・・・」
「ん?何 弥夢」
詩優はいつもの笑顔で弥夢を見た。
それに対して弥夢は暗い表情だった。
「力はいつ解放するのですか?」
いつ魔族を殺すのか?という意味で弥夢は聞いた。
「もうすぐ・・・かな。」
・・・
「・・・そうですか」
心から悲しそうに弥夢は呟いた。
「詩優さま・・・今から広い草原に行きませんか?」
◆ ◇ ◆ ◇
「草が茂っていて 綺麗だねー。」
心地よい風が吹く 広い草原だった。
「詩優様・・・」
「ん?」
『お相手願いますか・・・?』
――え?
弥夢は風のような速さで詩優に近づき
首もとに短剣で切りつけようとしていた―――
読んで下さってありがとうございます。
詩優と弥夢の続きを書きたいと思います。
宜しければ読んでください。