第11話 月那の日記
(月那)
私を拾ってくれた人・・・彼は雪斗という人だった。
19歳で、独り暮らし 学校の教師をしていると言っていた。
「他に聞きたい事はあるか?」
と言ったので、散々迷って質問を考えたのに
その時には、本を読み耽っていた。
だから、聞けなかった。
・・・
華月の3日 晴れ
日記を書くことにしたのです。
ノートとペンを渡されました。
字の勉強をするからです。
雪斗さんが字を教えてくれました。
でも私は昔に一応習ったのです。
あまりに優しく教えてくれるので、
教えてもらいました。
教えてもらっている時に
「なんだ お前字書けんのかよ」
と言われ ぎくりとしたのですが
その後に「他の文字も書けるのか?」
と言われ 「十二ヶ国しか知りません」
と答えたら雪斗さんは驚かれました。
そんなに少ないのかな・・・少し傷つきました。
でも、これから覚えればいいんだよね。
今度教えてもらいたいな。
【華月の10日 くもり】
最近へこんでいました。
雪斗さんに「お前は学校にいかなくていい。」
と言われたからです。
私は行く必要がないからなんだ。と思いました。
勉強をして私も雪斗さんみたいに
教師になれたらいいな。と思っていたのに・・・
【華月 13日 晴れ】
今日私は へこんでいる理由を雪斗さんに
聞かれました。
私は学校に行く資格もない自分が
情けなくて、落ち込んでいるといったら
雪斗さんはそこでふっと笑いました。
その時はなぜ笑っているのか分からなくて
びっくりしたのですが
「お前は学校で習うことを もう
知っていたから 行く必要がないって言ったんだ。」
「そんなに行きたいなら
行ってもいいけど 暇だと思うぞ。」
と言いました。
雪斗さんは 勘違いして勝手に落ち込んでる私の姿が
おもしろかった・・・みたいです。
雪斗さんが笑うと不思議な気分だ。
笑われて恥ずかしい気もするけど
それ以上に心が暖かくなる
この暖かさが
しあわせ
幸せというのかもしれない
雪斗さんが笑うと私は幸せです。
【華月 14日 晴れ】
「最近お前笑うようになったな。」と
雪斗さんに言われました。
その時は頷く事しかできなかったけど
それは雪斗さんが居るからです。
雪斗さんのお家にお邪魔してから
毎日が楽しいのです。
自然に笑うことができます。
【華月の25日 晴れ】
最近 色々な事がありました。
最初から書いてみようと思います。
雪斗さんに喜んでもらおうと
私は再び掃除人として働きだそうとしました。
ですが 「掃除人です。雇ってください。」
と 街のおじさんに言ったら
アイドルにならないかと言われました。
少し嘘っぽくて
怖かったのですが
これはお金が稼げるかもしれないと思って、
おじさんに着いていきました。
その時は役に立ちたくて
前が見えていなかったのだと思います。
そこでは写真を撮られるだけで
たくさんお金がもらえました。
写真を撮られたら
ずっと部屋に閉じこめられました。
そんな毎日が続きました。
あまりこわくなかった。
これで雪斗さんが喜んでくれたらと
思ったら むねがわくわくしました。
ある日 帰らしてくださいとお願いしたら
駄目だと言われました。
でも お金をもってかえらないと
雪斗さんに喜んでもらえないです。
何回もお願いしたら 怒って殴られました。
痛かったです。
殴られる事よりも 雪斗さんに喜んでもらえる事ができない方が
痛かったです。悲しかったです。
それから数日経ちました。
写真を撮られ続けました。
ここから一生出られないのかなと思って
毎日過ごしました。
雪斗さんに喜んでもらえないなら
今まで生きていた意味もないし
働く意味もない
明るい性格になっても意味も無い
雪斗さんがいなければ
なにもない
もうどうでもよくなりました。
けれど 気付いたら私は 布団で寝ていました。
私は栄養失調で倒れたようです。
びっくりしました。そこは、雪斗さんの家だったのです。
目の前に本を読んでる雪斗さんがいました。
私はすぐに、雪斗さんの袖を掴んで
ポケットに入ってるお財布を渡したら
雪斗さんは
雪斗さんは私を
強く強く抱きしめて
泣きながら 怒りました。
私は 雪斗さんにお金が届けられて
嬉しいはずなのに
それよりも
雪斗さんが心配してくれたほうが
何倍も何倍も
本当に嬉しくて
叫ぶぐらい大きな声で
私は泣き崩れました。
・・・
金なんかよりお前の方が大事だ。
ずっとずっと探してたんだ
お前を。
月那・・・
もうどこにも行くな。
・・・行かせないからな。
心配させんなよ。
・・・
空月 2日 晴天
最近は、雪斗さんの本を読むのに
夢中でした。
難しい本も頑張って読みました。
勉強です。
勉強は何か役に立つかもしれないと
思ったからです。
空月 6日 曇り
ある日 雪斗さんが寂しくならないようにと
お友達を連れてきました。
私は雪斗さんが居れば寂しくないのに
不思議だと思いました。
お友達は可愛い可愛いうさぎさんでした。
白と黒のぶちでした。
初めてのお友達でした。
雪斗さんはお父さんみたいだから
うさぎさんが初めてのおともだち。
でも お友達に名前をつけるのは変です。
・・・と雪斗さんに聞いたら
「うさぎに聞けばいいじゃん」
・・・
そ そうだったのですか!
と思い実行しました。
空月 10日 晴れ
聞こえないです。
聞いても分かりませんでした。
私がうさぎさんと話している・・・話そうとしていると
雪斗さんが来て
「月那・・・お前聞こえないのか?」
「もう一回聞いてみろよ」 と言いました。
私は聞いてみました。
うさぎさんは ヴウ・・・ヴウといいます。
うさぎさんの鳴き声って可愛いです。
「シェルナード=アリスっていってんじゃん」
立派な名前です!
雪斗さんがそういうので
私はシェルアと呼ばせて頂くことにしました。
空月12日 くもり
シェルアと庭で遊びました。
シェルアといると本当に楽しい
私の大事な友達。 大好きです。
でも、最近雪斗さんがお仕事に
忙しいのか家に帰ってきません。
寂しいけれど
私は雪斗さんに何もしてあげられない。
お仕事も手伝えない
働く事も出来ない
できる事ってなんだろう?
私ってここにいる必要あるのかな?
空月13日 雨
雪斗さんがまだ家に帰ってきません。
心配です。
シェルアも元気がありません。
空月14日 くもり
雪斗さんがいない。
部屋がとっても静か 広い。
もともと綺麗なお部屋だから
掃除もあまり意味が無い。
何をしよう
なんだか心がすかすかする。
不安になる。
だから シェルアを抱きしめて
ずっとお話をした。
シェルアも聞いてくれていた気がした。
ずっと傍にいてくれた。
空月16日 くもり
雪斗さんが夜遅くに帰ってきました。
疲れきった表情でしたが、帰ってきて嬉しいです。
私は料理を昨日一日中 勉強していたので
グラタンとコーンポタージュを作って食べてもらいました。
雪斗さんは前に私が 真っ黒な異物を作っても
全部食べてくれました。
そんな料理を作らない為にも練習しました。
「・・・うまいじゃん」
一口食べて 雪斗さんがそう言ってくれました。
その言葉で私は有頂天になりました。
料理って素敵だな
食べてもらえる 喜んでもらえる
シェルアにも野菜サラダを作りました。
全部食べてくれたから おいしかったのかなあ。
シェルアも喋れればいいのにな。
今日はとっても賑やかで
私はとても幸せです。
――次のページ ――
(紙がぐしゃぐしゃで 字は乱雑に書かれている)
そっか
そーいうことだったんだ
寂しくならないようにってそういうことなんだ
また 独りになる 邪魔になる
どうしよう どうしよう
どうすれば 雪斗さんは
わたしを忘れないでいてくれる?
写真を見たら
とってもとっても綺麗な人だった
そうだよね
雪斗さんも恋をするよね
お父さんなわけがない
ずっと一緒にいるなんて
なんで思ったんだろう
だめだ だめだ
もうすぐ捨てられる
怖い怖いこわいこわいこわい
陽月の3日に
結婚式がくる
いつ捨てられる 明日?明後日?
いつ?いつ?いつ?
やだ やだ やだ やだ
・・・やめて
いやあああああああ――――――
『お前の負けだ・・・モノとして一生生きろ』
私の負け・・・
あの人に負けた
あの人は勝った
雪斗さんと結婚する人
相手は・・・私に勝ったあの人
・・・
―――朝倉優歌―――
誰か 時間と記憶を停めて
・・・
それか
私の息の根をとめて
読んで下さってありがとうございます。
これを読んで月那と詩優の関係が分かった人も
いるかもしれないです。
ですが、まだ謎の部分もあると思います。
それを次回で書きたいと思います。
次回も宜しくお願いします。