神様のちょっとした悪戯
今日はエイプリルフールなのです。
なので神様はちょっとした悪戯をしてみようと思いました。
神様は『翡翠の和綴じの冊子』と『銀色の宝珠』と『氷でできた杖』と『深紅の華』を触媒に、四人の女の子を夢の中に招待しました!
さてさてここから始まるのは四人の女の子たちの秘密の恋バナ。
終わってしまった子やこれからの子もいるけれど、さてさて、どんな甘いお話があるのでしょうか。
神様wktkです♡︎
◇◇◇
「ん……ここは……夢?」
黒いツインテールにとある高校の制服を着た少女が目をこすりながら気がついた。こする目蓋の奥は、右目は黒く、左目が赤い。
「んぐ……バトラー君よもう少し寝かせ……おや?」
彼女につられたように、美しいシルバーブロンドに淡いイエローのドレスを着た人形のようなお姫様が重たい目蓋をゆっくりと開いた。
「んー! なーに、ここ」
一番背が低く、歳も幼く見える栗毛の髪の少女が榛の瞳を開く。椅子に座ったままぐぐっと伸びをした。
「ふわぁ……ぁ?」
大きな欠伸をしながら、真っ黒な髪をくくり耳の辺りに大きな芍薬を差し、深紅の衣を着た女性が目を覚ます。
一つのテーブルに、円を描くように座った四人が、互いに互いの顔を見て困惑の表情を浮かべた。
誰かが何かを言う前に、神様が円卓に文字のホログラムを映し出しまーす。
『ここは神様が作った夢の世界です。貴女の目の前にいるのは異なる世界の恋する乙女たちです。この夢から覚めるには、四人で順に恋バナをしなければなりません』
神様仕様で、この文字のホログラムは見る対象者が自分が読める文字として映し出される。言葉も神様権限でちゃんと通じるようにしてありまーす。
ささ、いざ恋バナを!
「ふーん……面白い企画だけど残念。人選ミスだわ。私に話せる恋バナなんてないもの」
「奇遇だ。私もだぞ」
幼い少女とシルバーブロンドのお姫様が口々に言う。
人選ミスなんかじゃないよー。神様ちゃんと知ってるよー。
『現在だけにとらわれず、過去、未来においても、恋バナの対象になるので問題ナッシング』
「は?」
「……そういうこと」
シルバーブロンドのお姫様が意味がわからないと首を捻るけれど、幼い少女の方は嫌そうな顔をしたけれど納得したようだ。
「落ち着いた? それなら早速始めましょうよ。夢を操るような神様なんてたちが悪い……こういうのは理屈こねるより素直に従うのが得よ」
ツインテールの女子高生が足を組ながらため息をつく。
芍薬を差した女性がゆったりと微笑んだ。
「ふふ、恋バナとか私憧れていたの。誰かに旦那様を自慢できる機会なんて早々ないから」
(こいつ既婚者か)
三人の心の声がハモりました。
芍薬を差した女性が「そのまえに」と、前振りをする。
「自己紹介しましょうよ。恋バナする前に、お互いの事を知らないとね?」
ごもっともです。
◇◇◇
神様は気が利くので、自己紹介が終わると各々のテーブルの前にネームプレートと、それぞれが食べたことのないようなお菓子が置いた。
ツインテール女子高生、結姫梨香。
置かれたお菓子は月餅。彼女の世界に無いわけではないが、彼女の国にはあまり馴染みのない菓子だ。
シルバーブロンドのお姫様、レーリィン。
置かれたお菓子は小豆の羊羮。真っ黒なプリンのような見た目のそれは、艶々としていて美しい。
幼い少女、ニカ・フラメル。
置かれたお菓子は金平糖。口の中で溶ける砂糖菓子は、見た目がお星さまのようでとても愛らしい。
芍薬を差した女性、珀明。
置かれたお菓子はショートケーキ。白い生クリームの肌の上に一つ置かれた苺の熟れ具合が、彼女の衣の色にそっくりだ。
四人が全員挨拶を終えたところで、またしてもメッセージがテーブルの上に現れる。
『誰から話す?』
「……どこぞで見ているのか?」
「不思議ねぇ」
「神様なんてそんなものよ」
「精霊みたいなものかしら?」
レーリィンが眉をしかめると、明がそれに相づちをうち、梨香が飄々と肯定、ニカが何かに納得したように頷いた。
もー、神様のことより君たちのことだよ!
早くお話してよ!
文字をチカチカ点滅させれば、そうねぇと一人が名乗り出た。
「恋バナをしたら夢から覚めるんでしょう? それなら積極的に話さなくてはね」
そういって楽しそうに微笑んだのは、芍薬を髪に差し、深紅の衣を纏った珀明だった。