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ルディアスと二人の補佐

 陛下の『試験』が終わると、俺たちのいる講堂へ生徒達が集まる。がらんとしていた講堂が騒々しくなるのに、時間はあまりかからなかった。


 学年の始まりには、陛下からこの国の成り立ちについて話がある。今年度は学院に女王候補が入学したとあって、お披露目も兼ねているようだった。シリウスの他に、候補と補佐は陛下の両隣に立ち、後の挨拶に備える。

 と言っても、補佐役は特にやることがないため、付き添いのようなものだ。


「女王様からのお言葉です」


 シリウスが告げると生徒達が静かになった。


「我が天空都市ノルノワール王国では、何人もの偉大な王達が魔法により、この国を支え発展させてきました。この国を浮遊させられているのも、過去の王達の力があったからです。

 しかし、王は一人では無力です。魔力を増大させることはできても、他者の魔力を借りねばこの国を治めることはできません。

 皆の力を貸すに値する女王候補を、皆の力で育ててほしいと思っています」


 そこで話を終えると、陛下は視線を生徒達から女王候補へと移し、一人一人の名前を呼ぶ。


「ソフィア、イザベラ、アイリス――」


 陛下に呼ばれ、三人の少女は順に軽く腰を落とし礼をした。

 

「では、全ての者に祝福を」


 陛下が声をあげると、シリウスから陛下に魔力が注がれる。その力を受け止めた陛下は、講堂を暖かい光で満たしていった。

 陛下の祝福を受けると、身体が軽くなったようで気分も良い。

 隣にいるアイリスは驚いたのか、口元に手を当てて頬を朱く染めていた。


 これで今日の予定は終わりだ。明日から通常の学院生活が始まる。

 俺は疲れているであろうアイリスを寮へ送ると告げる。


「いや、でもあの……」

「行くぞ」


 言葉を濁すアイリスに、俺は手首を掴み少し強引に連れて行く。

講堂を突っ切るように歩く俺に、生徒達はさっと道を開けた。

 周りから見れば、連れ去るように見えていたかもしれない。それでも青ざめて視線を逸らす生徒達の中には、俺を止める者は誰もいなかった。


 明日も迎えに行くと告げて、アイリスを寮まで送り届けた。

 自分の寮へ帰る最中、俺は二つのことで頭を悩ませていた。


 一つは、アイリスが何かに怯えていること。

 もう一つは、アイリスが魔力の調整をうまくできないこと。


 アイリスが『試験』を行ったとき、極度の緊張状態であることは、様子を見れば想像がついた。心的要因以外にも原因はあるのかもしれないが、まずは恐れや不安を取り除いてやらなければならなかった。

 そこからだなと思い、俺は良い資料がないか図書館へ向かう。


 この無駄に広い学院は三階立てになっていて、その三階に、図書館はある。大半が本棚で占められているそこは、学院生がいつでも本を読めるように提供されている場所だった。

 ただし、過去に一部の生徒が、借りた本を返さなかった為、原則貸し出しは禁止になった。その分、本を読む場所は充分に完備されている。


 急いでいる俺に「ルディアス」と馴れ馴れしく声をかけてきたのは、赤髪に同じ色の目を持つ男だった。その後ろに笑顔を浮かべた金髪碧眼の男が立っている。

 (いぶか)しげに二人を見る俺に、赤髪の男が話を続ける。


「びっくりしたぜ! まさか、あのルディアスが補佐を受けるなんてさ」

「私もですよ。貴方は補佐役なんて面倒がると思っていたので驚きました」


 驚いたと言いつつ笑顔を崩さない金髪の男に、シリウスと似たような印象を抱いて内心苛立つ。どちらの男も知らない顔だ。


「そうそう! 必要最低限しかやらないだろ? 周りのこと、いつも睨んでるしなー」

「――うるさい。お前らは誰だ」


 馴れ馴れしく話しかけてくる男達に、火の魔法で牽制しようと魔力を高める。

 慌てたような男とは対照的に、赤髪の男は目を見開き声をあげる。


「おいおい! 俺はエストだよ。講堂にいたろ!? こっちはアロイス! 同じ補佐役くらい覚えておけよなー」

「そうですよ。……というか、今、私達に魔法を使おうとしませんでしたか!?」


 うるさいと思いつつ、先を急ごうと睨みつけると、金髪の男があからさまにため息をついた。


「そのような態度をとるから、貴方は恐がられるんですよ。大体、先程もアイリス様を引きずっていたようですし、あれでは彼女が可哀相です」

「確かになー。一人で寮にいても落ち込むだろうしなー」


 ――アイリスは落ち込むのか?


 疲れているだろうと思って、早く帰してやったんだが裏目に出てしまったのだろうか。

 もしこの二人に、アイリスの気持ちが少しでも理解できるのならば、と疑いながらも聞くことにする。


「どうしたらアイリスは怯えないようになるんだ」


 俺が真剣に聞くと、間抜けな面をした二人が「どういうことです?」と話を聞いてくる。考えていたことを伝えると、「うーん」と唸りだした。


「私だったら……そうですね。女性には優しくします」

「そうだな。俺も恐がってる子には笑顔でいることを心がけるかな?」

「笑顔、か」

「困ったことや辛いことがあったりしたときに、話を聞いてあげるのも良いかもしれませんね」

「褒めてやるのも大事だぞ! 俺も弟や妹の頭をよく撫でてやってたしな!」

「話がそれてきたような気がしますが、褒めるのは確かに良い案かもしれませんね」

「話を聞いて撫でるんだな。わかった」


 本当にこんなことで不安が消えるのかと思いつつも、感謝の気持ちを示す。

 すると、また間抜け面を見せる二人は、顔を見合わせて笑い出した。


「俺こそルディアスと話せてよかった。思ったより良いやつだったしな」

「私も話せて良かったですよ。また何かありましたらお互い話しましょう。補佐役同士ですしね」


 そういえば、とエストが思い出したかのように話し始める。


「補佐役と言えば、他の属性をもつ補佐役もあと二年は残ろうとしてるみたいだぜ?」

「それはそうでしょう。

 私達のような属性別の候補生は、今年度の優秀な生徒がいれば残れるかどうかはわかりませんからね。

補佐役として女王候補を手伝えることは、それほど名誉なことですから必死なんでしょう」

「まぁな。だけど、俺はアイリスにあの力を見せられたからだと思うけどなー。それほど強烈だったしさ」


 その言葉に「アイリスには俺の魔力だけで充分だ」と伝えると、「……嫉妬か?」「いや、魔力って言ったしそれはないでしょう?」と何やらブツブツ呟いている。


「魔力量では敵わないかもしれませんが、水魔法だけなら負けませんからね。もしかすると、いつか力を貸すことがあるかもしれません」

「俺も。火が必要なときがくるかもしれないしな! 一人で思い詰めんなよー!」


 じゃあな、と去って行く二人に軽く頷いた俺は、図書館へ行くのはやめて寮へ戻ることにした。

 明日アイリスを迎えに行くときは、優しい笑顔で接してみよう。そう心に誓った。

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