宝探しをしよう
こんにちは。
この小説は不思議な冒険をテーマに描いた物語です。
短いですがちょくちょく投稿していきます。
1
あの一週間かけて遊んだ宝探し。幼いころの記憶だったからうろ覚え。しかし楽しくもあり、懐かしくもあり、悲しかった。
もう10年以上前の話になるのだが、部屋の掃除をしていたら懐かしい物を見つけたから思い出したのだ。
手元には綺麗な石がある。宝石とか高価な石ではなく、河原とかに落ちているような綺麗な石だ。
この綺麗な石にはたくさんの思い出がある。部屋の掃除を一旦止めて、椅子に座って石を眺めながら10年前を思い出す。
1日目:此岸花
「此岸花って知ってるか。」
後ろを振り向くと知らない少年が彼岸花を持って話しかけてきた。近所の子どもではないと思う。初めて見かけたのだから。
「誰なの」
「おれはヒロオ。よろしくな」
「アキラ」
「アキラって言うのか。良い名前だな」
「おじいちゃんがつけてくれたんだ」
ヒロオという少年は優しい笑顔を向けてくる。まるで友だちと接しているように。
「おれ暇なんだ。遊ぼうぜ」
「いいよ」
子どもって誰とでも仲良くなれる素質を持っている。だけど年をとる度に仲良くなれる素質が消えていくものだ。
大人になると新しい友だちは作れなくなる。だから子どもの時に友だちが作れるようになっているのかもしれない。
「じゃあ着いてきな。イイ所に連れてってやるよ」
アキラは案内されるがまま着いていくと鮮やかな紅い絨毯が視界に入った。
「キレイだ」
「だろう。あれ全部が彼岸花なんだぜ」
「ヒガンバナ?」
彼岸花の花畑にスイスイと歩いていく。自分がまるで別の世界に自ら入っていくようである。
ズボンに彼岸花の花粉が着くのなんて気にしない。
「彼岸花ってのは紅くて綺麗な花だろ?」
「うん」
「でも彼岸花は不思議な花なんだぜ。なんせ不吉な花と言われているし、天上の花とも言われててめでたい意味もあるんだ」
「不吉なのにめでたいんだ」
不吉と言われているのはお墓の近くによく咲いている花で死人花と例えられているから。めでたいと言われているのは法華経などの仏典に由来するから。
他にも相反する意味が複数あるから全くもって不思議すぎる花である。
「むずかしいよ」
「はは。アキラは勉強が苦手か!!」
「好きではないかな。外で遊ぶほうが好き」
「だよな。じゃあ宝探ししようぜ」
宝探し。なんとも夢溢れ、冒険心が刺激される言葉だ。アキラの心は刺激されまくりだ。
彼はヒロオにどんな宝を探すのかを目を輝かせながら聞いてくる。子供にとって宝というキーワード心を躍らせる。
ヒロオはアキラを落ち着かせるためにゆっくりと宝物の名前を言う。
1つ目は此岸花。
2つ目はカガミ石。
3つ目はウカの実。
4つ目はアザミ魚。
5つ目は太陽の水。
6つ目は虹の蔦。
7つ目は金の銭。
7つの宝物の名前を聞いたアキラは顔を更に輝かせるのであった。
「今日探すのは『此岸花』だ」
「シガンバナ。何か彼岸花に似てるね」
「よく気付いたな。此岸花は彼岸花の中でも特別な花なんだ」
ヒロオが言うには此岸花は彼岸花の咲く花畑の中で1本だけ咲く花。花の色は反対で青い。
1万本に1本の確立で咲く花という宝。
「この彼岸花畑に1本どこかに咲いてるんだ。先にどっちが見つけるか勝負しようぜ」
「うん!!」
此岸花を見つけよう。
2
紅く広がる彼岸花畑を無我夢中に走り周りながら此岸花を探すアキラ。
此岸花の特徴が空のように青い花ならすぐに見つかると思っていた。だけど案外見つからないものだ。1万本に1本しか咲かない花を探すのは伊達では無い。
目を凝らし、手で彼岸花をかき分け、此岸花を探していく。
「見つからない」
額に汗が垂れてきた。熱心に探していると汗が垂れてきて片手で拭う。なかなか見つからないが、それが宝探しの醍醐味である。
宝物が簡単に見つかったら面白くは無い。熱心に探して見つけたからこそ宝なのだ。
「見つかんないか?」
「ヒロオくんの方はどう?」
「こっちも見つからない。まあ宝探しはこんなものだ。ちょっと休憩しようぜ」
「うん」
トコトコを歩いてきて水筒を渡してくれた。どこに水筒なんて持っていたんだなんて疑問に思う者だが子供は不思議なことは疑問に思わない。
子供は目の前にある事実だけが全てなのだ。
「ほらよ」
「ありがとう」
とても冷たい麦茶が喉を潤してくれる。冷たい麦茶は喉だけでなく身体の内側も冷やしてくれるものだ。
おかげで熱かった身体がサッパリだ。これなら休憩が終われば宝探しを元気に再会できる。でも休憩中ならヒロオから此岸花のことをもっと聞いてみたくなった。
「ねえ此岸花ってどんなの?」
「そうだな。青い彼岸花みたいなものだけど、反対の花でもあるんだ」
「反対って?」
「彼岸花自体が不思議な花で2つの意味を持つけど基本的に不吉な意味の方が知られている。でも此岸花はその逆で幸運の花なんだ」
此岸花は彼岸花の逆で幸運の花。確かに1万本に1本を見つけることが出来れば幸運の持ち主だろう。
見つかれば幸運なことや面白いことが起こると言うのだ。その幸運のことや面白いことというのは見つけた人によるらしい。
「へえ、そうなんだ。それは面白そう」
「だろう。なら何としても見つけないとな」
ニカっと笑うヒロオに対してアキラも笑顔で返す。
休憩は終わりで2人はまた此岸花を探そうと腰を上げて彼岸花畑を見渡すと青い一点が目に映った。アキラとヒロオは互いに顔を見てからまた青い一点を見る。
そして2人は同時に走り出した。目指すは此岸花だ。これは宝探しと同時にどっちが先に見つけるかの勝負。同時に見つけてしまったのならば先に取った方の勝ちになる。
さっきまで休憩していたからお互いに元気一杯に走る。彼岸花畑を走り切ってついに此岸花を発見した。
「見つけた!!」
「ああ。でも先に取るのはおれだ」
アキラとヒロオはまた同時に跳んで此岸花を掴んだ。そしてその場から2人はヒュンっと消えた。
読んでくれてありがとうございました。
消えたアキラとヒロオは何処に行ってしまったのか?
次回をゆっくりとお待ちください。