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エコーバッドのキグルミ性能

「頑張って下さい」


 1~5階の簡単な依頼の受け付けを終わらせて迷宮に向かう俺にニッコリと笑ってそう声をかけてくれる受付嬢。今気がついたが、いつもこの娘だよな。他の娘に当たった事がない。たまには胸の大きなあの娘とか元気のいいあの娘とか当たったらいいのに。



 迷宮に入り、1、2階を駆け足で通りすぎる。構造が単純な為に他の冒険者も用がないなら素通りする。そして俺の前は時たま道をあける奴がいる。


 原因は……まあ……格好かな? 今はコウモリのキグルミを着ている。夜に何故か両手を広げ、


「バッ〇マーーン!」


 と叫びたくなる。衝動に耐えきれず2度ほどやった。ちょっとした騒動になったが後悔はしていない。


 3階に入ると耳に神経を集中する。エコーバッドのキグルミのおかげか、近づいてくる足音や声である程度の距離がわかる。


ーーコツコツ……『おい、そっt……』『さがれ!』……ドタドタ……。


 右側の方は何かばたついてる。左側は足音が1つだけ遠ざかってる。左の方が安全かな?


 そう思い左へ進む。途中また分かれ道に来たので音を聞き道を選ぶ。


ーーバサバサばさ……。


 頭の上で羽音がして、エコーバッドが集団で攻撃してきた。10匹ほどいたのを叩き落とし、踏み潰すと魔石に変わる。それを拾い集め、袋に入れる。


『キグルミのレベルが上がりました。キグルミ鑑定ができるようになりました。キグルミタンスの容量が増えました』


 あれ? キグルミ着たときと同じ声? キグルミタンスってあれか? 今着てるの取った時に空いた黒い穴。そこに突っ込んだら入れられたんだよな。そしてキグルミ鑑定って何だよ! 


ーーバサバサバサバサ。


 また、エコーバッドか。


「バサバサ、《うるせえ!》」


 イラついて羽音のする方に叫んだ。


ーーばさバサばさ……。


 乱れた羽音と壁に当たる音、気になって音の方に行くと落ちたエコーバッドがいた。


 必死に飛ぼうとしているエコーバッドを倒し魔石を回収する。


「よくわからんが相手せずにすんだ」


 もうそろそろ3階も終わりだろうと次の階への道を急いでいると、


ーーぎゅるるる……。


 腹の虫の音がした。俺のじゃない。何処からだろうと音を聞いてみると、脇道の奥から聞こえてくる。エコーバッドを警戒しながら奥へ行くと肩を切られ血にまみれている金髪が倒れていた。


「おい、大丈夫か?」


 助け起こすとまつげの長いイケメンだ。苦悶の表情さえキラキラ付いてるし。怪我を見るとそう深くないみたいだ。回復薬を傷口にぶっかけておく。このくらいなら、1時間程で塞がるはずだ。


「……ここは? イタッ。助けてくれたのか? 変な人」


 ……助けた相手に変な人って言われた! こいつ、捨てていっていいよな? 


「イタタタタッ、すまないが連れてってくれないか? このままじゃ傷がもとで死んでしまう」


 俺の視線から不穏なものを感じたのか慌てたようにまくし立てる。……はぁ~。仕方ないか。


ーーぎゅるるる……。


「その前に食い物はないか? ステーキでいいから」

「そんなもんあるか! これでも食ってろ!」


 俺はくそ不味い携帯用の干し肉をその顔にぶん投げた。……助けなきゃよかった。




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