『咆哮』の能力。ゴウバの本気
『咆哮』を上げた俺は身体中に沸き上がる力を感じながら突貫する。『咆哮』とは仲間と自分自身の能力を底上げしてくれるようだ。
俺の様子が変わったのを感じとりゴウバさんは防御を固めた。そこに体ごとぶつかるようにして拳を振り抜いた。
「!!ーーぐっ!?」
ゴウバさんの体が拳を受けてずれた。足元にはその際についた後が残っている。
「嘘だろ!?」
「隊長の体が動いた? 今まで見たことないぜ」
「モーヘッドの突進も止めれる隊長が……」
ちなみにモーヘッドは牛の魔物で大人しいので放牧もされている。しかし、子供がいるときは気性が激しくなり、下手に近づくと突っ込んでくる。威力は岩を粉砕する位ある。……えっ? マジで、あれくらって微動だにしないの? 昔見た事あるけど、あれで人が空飛んでお星様になったんだよ。
「おもしろい」
そう言って口元に獰猛な笑みを称えたゴウバさんが剣を落とした。そして一回り大きな手甲をはめると構えをとった。……剣を持ってた時よりも威圧感があるんだが?
「……あちゃー。ゴウバがマジになった」
「……えっ?」
「こっちの勝負は着いたんだから、静かに見てようぜ」
「……はい」
カルーはサーシャさんの手当てを受けながら観戦するみたいだ。いつの間に終わったの?
「いくぞっ」
ゴウバさんとの距離が気がついたら近づいていた。握りしめられた拳が顔面に向かって放たれる。
一瞬、拳が巨大化したように見えて、後ろへ飛んだ。だが、それは悪手だった。拳から放たれた何かによって着地することもできずに吹き飛んだ。何がなんだか分からないまま、転がった勢いのまま立ち上がりゴウバさんに視線を向ける。
ゴウバさんは拳を突き出したまま、起き上がる俺を見て笑っている。それを見て背中に寒気がした。
「くっ!」
あっちが動く前にどうにかしなければ……。
言い知れない恐怖が俺を突き動かした。フェイントをかけながら近づき側面に回る。しかしそこには俺を正面に見据えるゴウバさんがいた。更にここで足を使い引っ掻き回そうとするが、いつの間にか正面を向いているゴウバさんから逃げられない。
「……何ですか? あれ」
「ゴウバの昔習っていた流派の歩方だったかな? 相手にしてるといつの間にか近づかれたりして苦労するんだわ」
こうなりゃ、破れかぶれだ!
「ウオオオォォォ!」
せめて一撃だけでも当てようと『咆哮』を上げてゴウバさんに突っ込む。手の届く寸前で右へ回り踏みしめるようにしてパンチを繰り出した。
パンチを繰り出した瞬間、ゴウバさんの姿が消え、胸元にモーヘッドの突進を受けたような衝撃を受けて吹っ飛んだ。そしてそのまま意識を失った。
胸の痛みに目を覚ますと部屋でベッドに寝ていた。
「目が覚めた?」
カルーが入ってくる。
「キロウが目を覚まさないから、僕がおぶってここまで運んだんだよ」
「そうなのか?」
「バルクさんに体力つけろってあそこからここまで。魔物はバルクさん達が倒してくれたけどね」
でも、基本駆け足だから着いていくのに必死だったと笑った。
「しかし強かったね」
「そうだな。もっと強くなりたいな」
あの人達よりも強く。そして村人達の仇を……。
「その事なら、ボルクさんが嬉々として修業プランを練ってる」
少し遠い目をしてカルーが呟いた。それを聞いて俺も同じ目をしているんだと思った。どんな修業が待ってるんだろうか……逃げたい。




