夜もあるのかよ!
「カルー、生きてるか~」
「突いてー、突いてー、押してー、押してー、はらって、はらって、最後はkill!」
どっかの道場コントのかけ声をつぶやいてる。目が虚ろだ。
「大丈夫ですよ。はい。お坊っちゃま、アーンして」
「モガモガモガッ……」
口に突っ込まれたのは味覚破壊のあの逸品! 白目剥いてますが本当に大丈夫か?
「キロウさんもお食事になさいますか? それともこれ?」
俺は無言で目の前の食事をかっこんだ。
「ちっ!」
舌打ちすんなや! 明日も地獄が待っているので無理やり詰め込む。うまいから入るけど……あれ? かっこんでると急に眠気が……。
「速効性と言うだけあってよく効きますねこの睡眠薬」
は……謀られ……た。
「そろそろ、起きろーー!」
はっ! ここは? 回りを見ると、暗い木々に囲まれているってマジ何処だよ!
「おい、起きろ緊急事態だ!」
隣に転がっているカルーを見つけると頬をはって叩き起こす。
「キロウ、キロウ! 起きたから! 手を止めて!」
「寝言か? まだ起きないのか?(棒)」
「マジ止めて!」
イケメンは ハゼレバ イイト オモイマス。
「2人とも起きたな。これから夜間訓練を始める」
「ボルクさん」
「ここは何処だよ」
どう見ても町中じゃない。
「迷宮都市から離れた森の中だ。ここから迷宮都市まで戻るのが訓練の内容だ」
帰る方角とかわかんないですけど?
「勘!」
マジで!?
「ちゃんとコンパスを用意しとる。ここから南じゃ」
コンパスだけで戻れと?
「帰るだけじゃ、簡単だから……」
じいさんが暗い木々の奥を見る。見るとサーシャさんが走ってくる。
「サーシャさん」
「はい、タッチ」
思わず上げた手をパチンと叩くとそのまま走り抜ける。
「き、キロウ!」
サーシャさんが走ってきた方をカルーが指差している。そっちからバロックウルフの群れがせまってきている。
「約30匹ほど来ますので頑張ってください」
「まあ、がんばれ」
えぇぇぇぇぇぇ! 振り替えるとじいさんとサーシャさんの姿が消えていた。
「キロウ! どうしよう?」
「逃げるに決まってんだろ!」
迫ってくるバロックウルフに向き直る。
「『来るんじゃねえぇぇ!』」
超音波を撒き散らす。先頭のバロックウルフがふらつくのを見て走り出した。
人間とバロックウルフの命がけの競争はやはり森で暮らすバロックウルフに有利だ。
背後から飛びかかるバロックウルフをカルーの剣が切りつけ動けなくし、俺は時折、超音波で行動不能にするが数が減らない。
何度目かバロックウルフが怯み距離が開いたときに、
「うおっ!?」
足を何かに引っかける。見るとそこにはロープが張ってあった。
「トラップ?」
一緒にこけたカルーがつぶやいた時に、バロックウルフの泣き声がした。
バロックウルフ数体に杭のようなものが刺さっている。
「やりすぎだろーー!」
「死ぬ死ぬ! マジ死ぬーー!」
この後、森を抜けるまでバロックウルフの大半がトラップで死んだ。俺達がトラップに引っ掛からなかった事が奇跡だ。
「お帰りなさいませ」
宿ではサーシャさんが帰りを待ってくれていた。返事もできないまま俺達は部屋に入り、ベッドで気を失うように眠りに着いた。
「起きろーー!」
朝になりベッドごとひっくり返され起こされる。こんな日々が暫く続くのであった。




