モンスターの抜け殻?
「ん? 何だこれ?」
それはバロックウルフの死体から魔石を取っている時に見つけた。
バロックウルフの死体かと思ったが、どうも手触りが違う。持ち上げると中身がない。
この辺のやつらは俺1人で倒したもんだし、その時はこんなものは見たこともなかった。
「おい、どうした?」
でっかい斧を肩に担いだジィオが警戒しながら近づいてきた。バロックウルフの残党を気にしているのだろうが、ここまで殺られればもう逃げ去っていると思うが。
「何だそりゃ?」
ジィオはワイルド系イケメンの顔をしかめさせ手に持っている物を見た。
「……毛皮?」
「何で疑問系?」
「だって、これ頭付いてるし。後ろの方が……」
バロックウルフの背中の部分が割れている。
「中に入って着れるみたいだ」
「……何それ?」
俺からそれを受けとると伸ばしたり逆さまにしたりして確かめている。
「……とりあえず、リーダーの所に持っていくか」
そう言って俺に投げ渡すと、馬車の方に向かって歩いていった。
「よう! 新人。初戦闘はどうだった?」
丸い髭面の男が人懐っこい笑みを浮かべこっちに来る。リーダーのベックさんだ。俺は頭を下げ挨拶する。
「ベック、こいつが変なもん拾ってよ」
ベックさんもこれを見るとジィオと同じような顔をした。
「これは後回しにして、商人の所に急ぐぞ夜営する場所まで早くしないと日が暮ちまう」
ベックさんについて商人の待つ馬車に戻ると直ぐにその場をたち道を急いだ。
日が沈む前に夜営する場所につき、簡易テントを張り食事の用意をする。といっても薪に使う小枝を集めただけだが。
そして食事中、夜番の順番を決め早い者からテントに入る。
俺は最初の方なのでジィオと一緒に火の前で起きてその様子を見ていた。
「お前、本当にいいのか? 迷宮都市に行ってもいいことだけじゃないぜ?」
「それは分かってるよ。でも強くなりたいんだ」
「俺達と一緒にいても同じだろ?」
「それでもそうしたいんだ」
脳裏に浮かぶのは壊された家屋。バラバラにされ食い散らかされた死体。
「誰よりも早く、強くなりたいんだ」
小さく呟くと俺は剣を持って火から離れる。
そしておもむろに素振りを始めた俺を悲しげに見つめるジィオの視線を感じた。